黒白Rhapsody(D.Gray-man)

□第7夜
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アレンが村長に捕まって、汽車に乗れなくなっていたその頃、汽車内では…

「俺っすか。」
『お願いラビ!アレンくん、きっとさっきの駅で乗りそびれちゃったんだわ。
戻って捜して来て!」
「ガキか、あいつは…」
『私も一緒に行くわ。』
「ほら、アヤ嬢もこう言っているのだ。
行け。お前の如意棒でひとっ飛びだろ。」
「槌だよ、パンダ。」

そして私はラビの槌に腰掛けてラビの腰に腕をまわす。
前で彼がビクッとするが、気にしない。

―どうして驚くのかな?何か言ってから腕をまわすべきだった?―
―俺どうしてビクッとしてるんだ!?
もしかして…まさかね。突然だったからだよな。―

そのままラビは先ほどまでいた駅を目指して飛んだ。

辿り着いた駅の周辺には村が広がっているが、何処にも明かりが見当たらない。

「どうしてこんなに暗いんさ…」
『まるで何かに怯えているようね。
あっ、ラビ!あの建物だけ明かりが点いてるわ。』

隣を見ると彼はもういなかった。

『えっ?ラビ、何処!?』


アレンは村長に連れて行かれ、吸血鬼の話を聞かされていた。
それはこのようなものだ…

「この村には昔から恐ろしい吸血鬼が住んでいる。名はクロウリー男爵。
昼間は決して姿を見せず、奴のすむ古城からは毎夜獲物の悲鳴が止まることがない。
城に入ったら最後、生きて出られない。
それでも、城に近づかなければ男爵は誰も襲わなかった、あの夜までは…
村で暮らしていた独り身の老婆が男爵に生き血を吸いつくされ、蒸発した。」

静まり返った空間に、能天気な声が響いた。

「嘘ぉ。」
「!ラ、ラビ!?」

近くの荷物から現れた彼にアレンだけでなく村人たちが驚く。
そして武器を構えるが、ラビの胸にあるローズクロスを発見しアレンと同じように椅子に縛り上げた。

「ラビ、アヤは?」
「どうして来てると思うんさ?」
「アヤのことだから、ついて行くとか言ったんだじゃないかな…と。」
『その通りだけど?』

私はラビみたいに不法侵入せずに堂々と入口から入る。
村人はすぐに私のローズクロスにも気付く。

「アヤ!逃げて、捕まっちゃうよ!!」
『私も縛るの?』

上目遣いで言えば村人たちはアレンたちの所まで通してくれた。

「ズルい…」
『女の武器よ。師匠に学んだの。“使えるものは存分に使え”って。』
「ヒドイこと教えるんさね、クロス元帥って。」
「とりあえず何なんですか一体?」

アレンが村長に尋ねる。

「実はクロウリーが暴れ出す少し前に村に1人の旅人が訪ねてきたのです。」

その旅人は自らを神父と名乗りクロウリー城へ向かった。

―自らを神父と名乗る?まさか、師匠じゃ…―

3日経っても帰って来ずやはり殺されてしまったのかと思った矢先、その旅人は帰ってきた。
そしてある言葉を残して去っていった。

「もし古城の主に何か変化があったら、私と同じ十字架の服を着た者たちに知らせろ。
そやつらが解決してくれる。
待っていればいつか必ずこの汽車に乗って来るであろう。」と。

『やっぱり…』
「アヤ?」
『その神父って、赤い長髪に黒いつばが広い帽子を被って、顔の右半分を道化師みたいなマスクで隠してる…
とにかく変な神父じゃなかったですか?』
「ま、まさか…」
「?」

アレンにはすぐにそれが誰か分かったようだ。顔色が悪くなっていく。

「はい、こんな人でした。」

彼が描きあげた似顔絵に描かれていたのは間違いなく師匠だった。


その頃神田は…

[ゲヘヘヘヘ!無理だ無理だ!元帥は助からねェ!!
ノアとアクマが大軍で奴らを追いかけてるんだぜ?
お前らがこうしてオレ(AKUMA)を壊している内にも…!!]
「うるせェ」

頭が異様に大きいアクマが長い黒髪のエクソシストにメッセージを残した。
これはエクソシスト全員に対してのメッセージ。
そのアクマの頭を彼、神田ユウは六幻で貫いた、不機嫌そうな顔で…

「行くぞ、神田。」

兄弟弟子2人もアクマを破壊し終えたようだ。

「まったくジャマじゃん。
次から次へと襲ってきやがって。
ちっとも進めやしない。」
「俺たちを足留めしてぇんだろ。」
「元帥に辿り着くだけでも一苦労だな。」

兄弟弟子のデイシャの愚痴に始まり、神田の不快そうな声、そして大柄なマリの疲れ果てた声が続く。
彼らはティエドール元帥を捜していた。
私たちがクロス元帥を捜しているように。

「チッ」
「なんだ?イライラしているのか、神田?」
「してねェよ!」

苛立ちを隠すつもりがないなら反論しなければいいのに。
そう思いながらも付き合いの長い兄弟弟子の2人は何も言わない。

「しかしいつになったら辿り着くのかねェ?
オレたちの捜すティエドール元帥はもうこの街にゃいねぇみたいじゃん?」
「どうせどこかで絵でも描いているんだろう。」
「まったくオレらも変な師を持っちまったなあ、神田?」
「俺はあのオヤジが大っ嫌いだ。」

―だから機嫌が悪いんだぁ…―

「ま…クロス元帥よりはマシじゃん…?」

その言葉はデイシャの何気ないもの。
でも神田にとっては影響の大きなものだった。
マテールで別れてから私と神田は会っていない。
神田は私のことを考えながら、呟く。
その気持ちが“恋”だとは気付かないまま。

「アヤ、お前は今どうしてる?」
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