Paradox Love(うたプリ REN)

□第8話
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ファッションショーを終えて、私たちはついにRosy*Paradoxとして特番に出演していた。
1時間の音楽番組で、Rosy*Paradoxの特集なのだが、私たち個人についても話すことになっている。
衣装はクールなもので私は黒のスーツ、ネクタイはなく胸ポケットにはチェリー・ピンクのチーフを入れていた。
レンは白いスーツで、胸元には深紅の薔薇を飾っている。
特番は生放送で私たちは番組の始まり5分前に舞台裏にスタンバイしていた。

「緊張してるのかい?」
『少しね。でも大丈夫、レンくんも一緒だし。
Rosy*Paradoxの葵桜はクールなんだから。』

レンはクスッと笑うと私のひとつにまとめられた髪を撫でた。
それと同時に番組が始まり私たちは真剣な表情で互いに頷き合った。

「今日のゲストは新感覚アイドルとしてデビューするユニット、Rosy*Paradoxのおふたり!!」

私たちは小さく笑みを浮かべながら颯爽と登場した。
大きな歓声に包まれながらパーソナリティーと合流する。

「Rosy*Paradoxの神宮寺レンだよ。
もちろんST☆RISHの一員でもあるけどね。」
『同じく如月葵桜。よろしくね。』
「今日はおふたりにユニットだけでなくそれぞれの活動についてもお話を伺います。」
「『よろしくお願いします。』」

そしてまず私の“KISSして”とレンの“オレンジラプソディ”のステージが届けられた。
仲間たちは寮の談話室に集まり私たちの様子をテレビの向こうで見ているらしい。

「レンの奴、いつもより楽しそうに歌ってるな。」
「如月が一緒にいるからだろう。」
「わかりやすい奴だぜ…」
「葵桜さんも活き活きしているように感じます。」
「神宮寺と葵桜にとって共に歌うことは夢でもあったからな。」

そんな会話が交わされているとは知らず私とレンはパーソナリティーと共に話し始める。

「神宮寺さんはST☆RISHとしてうた☆プリアワードを受賞されたんですよね。」
「あぁ。セッシーも加わって以前よりステキなハーモニーを届けられるようになった結果だと思うよ。
レディたちの応援のお蔭でもあるけどね。」

彼がウインクをすると黄色い声が上がった。

「受賞してから仕事も増えて毎日充実してる。
ありがたいことだよ。」
「如月さんは早乙女学園出身ではないとか?」
『私はある音楽大学で1年間学んで特別な対処で正式な卒業として認めてもらったんです。
元々LalaやTAKUTOとして芸能経験があったので、そこも考慮していただけたんだと思います。』
「どんなジャンルの曲も歌われるようですが?」
『私の紡ぐ音楽はそれを書いているときの私の心情そのものなんです。
だから曲をジャンルとして捕えず、思いのままに奏で歌います。
それを聞き手のみなさんにも感じとってもらえたら嬉しいな。』

観客やカメラに笑みを向けているとパーソナリティーの話がRosy*Paradoxの内容へ移った。

「今回のユニットについて説明していただけますか?」
「Rosy*Paradox、略してロズパラは俺たちの所属している事務所のボス、シャイニング早乙女に勧められて結成したんだ。」
『私たちには共通点も多いし、一緒に歌うのは夢だったのでとても嬉しいです。』
「というと?」
「俺たちは幼馴染なんだ。
小さい頃から共に曲を作ってたから、こうやって公の場で歌って想いを届けられること自体奇跡のように思っているよ。」
『私たちは同い年ってだけではなく、誕生日まで同じなんです。
バレンタインに生まれた私たちにRose…特に情熱的な赤い薔薇はピッタリでしょう?』

パーソナリティーはレンの胸元で咲く深紅の薔薇を見て納得したようだった。

「ところで新感覚アイドルとのことですが、どのような部分が新感覚なんですか?」

待ってました、とばかりに私とレンは笑う。

『私たちがロズパラとして歌う曲はすべて男性目線のものなんです。』
「え?でも如月さんは…」
「葵桜もクールに男らしく想いを歌うのさ。
ロズパラは男の…時に強く時に儚い愛を色っぽく歌い上げるユニット。
俺たちだからこそ歌える際どくて少しエロティックな歌詞に仕上がっているよ。」
「エ、エロティックですか!?」
『新しいでしょ?
正統派ばかりはつまらない。
私たちの刺激的な曲でドキドキさせてあげますよ。』

私たちは挑発的且つセクシーな笑みを浮かべる。
するとパーソナリティーが顔を染めてしまった。

『男らしく歌うためにロズパラとして活動するとき私は髪をまとめるし、スカートは穿きません。』
「だからといってTAKUTOみたいに男装するわけではないよ。
葵桜は葵桜としてクールに歌うのさ。」
『レンくんと一緒にね。』

それから私たちは番組の最後を飾るべくタイトルコールを口にした。
ステージは暗く立っている私たちの姿は見えはしない。

「色っぽくとも神秘的な世界へご招待…」

レンの声に歓声が上がる。

『ふしだらで道徳に反するような許されない想いでも、嘘や幻想ではないから…』
「聞いてくれ…」
「『“IMMORAL WEDDING”』」

私たちはイントロが流れ始めると特に踊るでもなく優雅に訴えながらワインの似合いそうな貴族のように歌い始めた。
ステージはそのイメージに合わせてセピア色の照明で染めてもらった。

《IMMORAL WEDDING》

甘く色っぽく魅了するように歌う私たちに画面の向こう側にいる仲間たちも釘付けだ。
そして2番の途中では照明がすべて消され、私たちだけがスポットライトで照らされた。
音楽も静かになり私たちの呟きだけで世界が紡がれ、それを聞いた人々から悲鳴にも似た歓声が上がった。

「『ちゃんと言ってごらん?』」

歌い上げると私たちは背中合わせで立って流し目をした状態で曲を終えた。
こうしてRosy*Paradoxもデビューし私たちの活動は本格的にスタートしたのだった。
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