東京喰種

□僕だって、不安になることくらいあるんだよ
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私は悩んでいる。
それも猛烈に。
理由はとても簡単。
買いたいものがあるのだ。
けれど、時計を見たら午前12時を過ぎていて、もうそろそろ1時になろうとしていた。
それでも私は、ここで引き下がる訳にはいかないのだ。
別に、今日が特別な日というわけではない。
ただ昨日外に出たときに一目惚れしただけ。
あ、これ、金木君に似合いそうだなって。
だからこそ私は、引き下がる訳にはいかないのだ。
いけないのに、金木くんは心配してる顔で、なんでそんなに散歩にいきたいの?と問いてくる。
できればサプライズをしたいのだ。
正直に答えたら、サプライズにもならない。やっと出た答えは、風に当たりたい、というなんとも言えない答えだった。
もちろん金木くんに、窓を開ければいいじゃないか、とバッサリ切られた。
ねぇ、なんで、と金木君が私をジッと見つめてくる。
私はそんな彼の目に弱いのだ 。
金木君は私を見つめながらだんだんと近づいてくる。
私も彼が近づいた分だけ後ろに後ずさる。
けれど家の中。
数歩後ろに下がれば、トンッと背中に壁が当たった。
それと同時に、金木君の手が、私の顔の横にくる。
いわゆる壁ドンというやつだ。
金木くんは何も言わず、ただ私を見つめる。
無言に耐えきれずに私は、大丈夫だから心配しないで?とどもりつつも答えた。
しかし金木君は、私の腕を優しく引っ張った。
何も反応しなかった私は、ふわりと彼の中に収まってしまう。
金木君の顔が耳元にきていて、彼の吐息で耳が擽ったい。
思わず笑いそうになったけれも、耳元で囁かれた言葉に、ただただ顔を紅くするしかできなくなってしまった。


「僕だって、不安になることくらいあるんだよ」

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