Long..【cow】
□1・雨は降りませんか
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その日は雨だった。私は誰もいない朝の道路で傘も差さずにぽつんと座っていた。別にこれといった悩み事がある訳もなく、私は考えたいときはよくこうするのだ。でも、今日は特別に悩み事がある日‥目薬みたいに落ちてくる雨にも気にせず空を見つめて、考える。
・・足音がする。人々は私を見て避ける。そう、今回もきっとそう。
しかし、その音は私の期待を裏切り背後で止まり、その代わりに大きな黒い影が私に覆いかぶさった。
「何してンの」
「・・・雨、好きなんです。私。」
「答えになってねェだろが。」
初めてのことでひどく動揺したが、勇気を出してその人のことをゆっくりみあげると丸い眼鏡越しに威圧感のある眼を私に向けていた。
「考え事・・・です。」
「金か?」
そんなことを言いながら彼はさりげなく傘を私にさしてくれて、やさしいひとなんだと感じ取れた。(外見で判断したらだめね)
「いえ。それは全然・・・
・・・聞いてくれますか?」
それから、10分くらい私の話をまっすぐに聞いてくれた。私は誰かに聞いて欲しかったのかもしれない。見ず知らずの彼にたくさんの話をしてしまった。前の会社を辞めさせられ、仕事で少し悩んでること。かと言って、風俗は本気でやってる人に対し、申し訳ないのでやらない事。なんでか、彼の前で話してもいいと直感で思った。
「・・・・ふーん。」
「あ!ごめんなさい私ばっかr「お前さ、なんで前の会社辞めさせられたの」
「あ、えーと。実は常連のお客様の中に明らかに様子のおかしいひとがいて・・・「なんでそう思った」
「え・・・・・その人の行動とか、目配りとか、発言とか、あとは・「あとは?」
「直感です。」
かぶさり気味で質問攻めにされたが、続けることにした。
「でですね、私周りのことが見えないバカなんで、その人の目の前でしかも会議中にポツリと言っちゃたんですよねー。幸いそのお客様には届いてませんでしたけど、その直後速攻クビになりました・・はは・・。」
「で、その会社どーなった。」
この人には全部見えてるのか
「次の月に倒産しちゃいました。‥詳細は分かりませんが。やっぱり私のせいですよね…。」
すると目の前の彼は無表情のまましばらく黙っていたが、ゆっくりした瞬きと共に口が開いた。
「アンタおもしろいな。」
「はへ?」
…初めてだった。こんな行動を素でするので周りには奇異の目でみられていたから。つい最近も罵られたばかりだったのに。それが慣れっこだったのに・・・おもしろいと言ってくれた。
しばらく固まってる私の腕を急につかまれ、引っ張られた。
「行くぞ。」
「え?え?どこにですか…?ちょっと!」
急にぶつかったので、彼の胸板にぶつかってしまった。・・・あったかい。
「お前仕事探してンだろ。」
「え…あ、はい。」
「俺のとこで雇ってやるよ。」
その強引な一言で私の生活はガラっと変わってしまった。