露の夢
□参話 瓦解
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卑猥な音をどうにかする術が分からず、一期はぎゅっと目をつむって現実を見ないようにした。それでも容赦なく、はしたない音は一期の耳を犯す。断続的に漏れる喘ぎに「いや」という言葉を何度も混ぜ込むが、それは逆にますます主を調子に乗せるだけだった。
「その様子だと、自慰すらしたことなさそうだな」
主は何の気なしにさらりとそう言う。
人の体を持った刀たちの間で、自慰は生理的な現象であると聞いていた。
しかし一期はなぜそうしなければいけないのか、理解できなかった。だから必要としなかったのだ。ましてやまだ人の体に完全に慣れたというわけではない。ゆえに、こんな経験は初めてである。
強すぎる刺激に、一期は早くも参っていた。
いやだ、いやだ、気持ち悪い。
ぬるぬると滑る主の手。清光や弟たちの頭を撫でていた、逞しく男らしい手だ。女の柔肌ならまだしも、こんな無骨な手がこんなことをするとは思わなかった。
「さぁ、いけ」
主の声が冷たく響く。一期は抵抗するようにうめいた。
「強情だな。……体はこんなにも素直なのに」
手加減する気もない乱暴な手に追い立てられるように、背中がぞくぞくと粟立つ。一期の目には生理的な涙が浮かんでいた。顔を横に向けると同時に、目尻から落ちていく。
「我慢しなくていいんだぞ? さあ」
肉棒を扱く手つきが、さらに速まる。
「あっ……嫌だ、アッ、あ……っ!」
「いけ」
「あぁっ、あ! ア……!」
喉を反らし胸を浮かせ、初めて知る衝動のまま。
一期はとうとう、主の手に精を放った。