露の夢

□参話 瓦解
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 射精した後だからか、体がだるい。
 一期は鼻をすすりながら、両手で顔を覆っていた。
 どうして……どうして、こんなこと……。
 主は自分のことを、性的な意味で見ていたというのだろうか?
 涙を拭う間もなく、ふと後孔に熱を感じる。まさかと青ざめた瞬間、思考を引きちぎるようにして主のモノが入ってきた。蕩けきっていない肉を割き、身体を拓いてゆく圧迫感に、一期はたまらず悲鳴を上げる。

「あぁっ! いっ、痛いです! 主、あるじ……っ!」
「なんだ」
「ぬっ……抜い、て……くださ、ぐっ!」

 一期の言葉に構わず、主は自身を埋め込んでいく。めりめりと音を立てて進められる熱に、一期の体はがくがくと痙攣した。痛みに足が引きつれる。頭の中で星が散った。

「おやめください! やめ、っ、あ!」
「はは、最後まで入ったぞ」

 信じられない、そんな。
 主は繋がった一期の腰を軽く揺すった。快感は全くない。ただ痛いだけだ。一期は痛みに耐えながら、掠れた声で必死に訴える。

「主……お願いです、おやめください……こんなこと、間違っています……」
「ほう」

 主はぴたりと動きを止める。目を細めた主は、やがて口を開いた。

「ならば、ここにお前の弟を呼ぼう」
「……⁉」
「骨喰の肌は柔らかそうだな。薬研の髪もさらさらしていて、さぞ気持ちよかろう。乱も具合がよさそうだ。ふふ、五虎退や鯰尾もいいなぁ。いっそ弟たちが見ている前で、お前を犯してやろうか。さて、誰を呼ぶ?」
「そん、な……」

 絶望した。
 もし自分がここで拒めば、自分の醜態が知られるだけではなく。自分が味わったとの同じだけの痛みを、弟たちが味わうことになる。
 鯰尾、骨喰、秋田、厚、五虎退、信濃、前田、乱、薬研……。
 みんな可愛い弟たちだ。誰かを犠牲にするなど、絶対にありえないし、そんなことさせない。許さない。
 こんな痛み、知らなくていい。
 主と繋がったまま、一期は震えた声で言葉を紡ぐ。

「あ……いや、いやです。どうか、弟たちには手を出さないでください……」

 泣きながら、一期は懇願した。敵に斬られるよりも鋭く深い痛みに、一期は涙を流すことしかできなかった。
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