短篇集

□わがまま
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 鶴丸は不自由な身で、転がったまま一期を見上げる。刺激を与えようにも、腕が使えなくては、そんなことすらできなかった。解放されたはいいが、これではさっきとそう大差ない。
 尻の中にある性具の振動をさっきと同じように強くして欲しいと思うが、鶴丸はそのことをなかなか言えなかった。
 恨みがましい目で、鶴丸は一期を見上げる。一期は分かったような顔で、「どうしたんです?」と微笑んでいるだけだ。

「……ちご」

 鶴丸は掠れた声で一期の名を呼んだ。

「なんでしょう」
「やく、はやく俺にくれないか……」
「なにをです?」

 はぁはぁとあえかな吐息が繰り返される。生唾をのんで、鶴丸は体を起こすと一期に懇願した。

「あつくて硬くて、太い、一期の……! きみも、げんかい、だろ……っ!」

 鶴丸の言葉に、一期はことさら嬉しそうに目を細める。それから、やれやれと呆れたように息を吐いた。

「嫌だ嫌だと言っておきながらも、最終的には私を欲するんですな」
「……っ、ああ! はやく、くれ……!」
「わがままなお方だ。ええ、かしこまりました」

 そう言うと、一期はベルトのバックルを外した。前を寛げて、下着から逸物を取り出す。
 彼も彼で鶴丸のはしたない姿に欲情していたのか、太い肉棒は熱くそそり立っていた。
 それを、起き上がった鶴丸の白い頬にぐいっと押し付ける。鶴丸は不思議そうな顔をした。すかさず一期の方を見ると、彼は微笑みながら鶴丸を見下ろしていた。

「舐めて、綺麗にしてくださいますかな」

 鶴丸はためらった。しかし舐めない限り、本人は解放してくれないだろう。あぁ、と喘ぎにも似た吐息で肯定して、鶴丸は目を伏せる。ひくひくと後孔が疼いた。早く後ろに欲しくて、たまらなかった。
 それでも薬を含まされていやらしく熟した体は、待ち望んだ快楽へと、喜んで食いついたのだった。
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