短篇集

□夜鷹は籠の中
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「あっ、あっ、いいです、そこ、もっと……あぁっ!」

 大きく開かれた白い足が、闇の中に浮かんでは規則的に揺れる。ぐちょぐちょと淫らな水音は、その間から響いているようだった。薄桃色の柔らかな髪を布団の上に広げ、宗三左文字は天を仰いだまま組み敷かれていた。

「は、ア、あぁ、あ……っ、んっ」

 汗で濡れた頬が赤く火照る。悩ましげな吐息が、断続的にこぼれる。肌蹴た着物の合間に無骨な手を入れられ、胸を愛撫された。その手を快く受け入れた宗三は、悦びの声をますます深くする。

「あ! あァ! はぁ、っ」

 肩に添えた細い手で、相手の着物を握り締める。ひときわ強く奥を突かれて、宗三は桜色に染まる総身を反らした。相手が中で達したと同時に、宗三もまた精を吐き出す。奥深くに相手の精液を受け入れて、その余韻に痩躯がうち震えた。
 息をつく間もなく、宗三を組み敷く大男は口から長い舌をぬるりと差し出す。宗三はためらわなかった。相手の舌を、嬉しそうに食んでやる。
 唇を乱暴に貪られながらも、あえかな声を零すことを忘れない。恍惚の表情で目を細め、与えられた快感を返すように深い口づけに応える。しばらくして唇が離れる。唾液が糸を引いて、宗三の唇を潤した。
 互いの欲望を存分に満たした後で、二つ分の呼吸がこだまする。数分もすれば、それは自然と落ち着いていった。
 薄闇の中、宗三はたおやかに笑う。
 右と左で色が違う瞳の奥は、満足そうでいて──石のように、冷えきっていた。
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