短篇集

□ひとしきもの
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 ふすまの隙間から、苦しげな声が微かにする。
 なにかに耐えるような、呻きにも似た声だ。
 けれどその声は、確かな悦びを含んでいた。鼻にかかったような低い声は、甘やかな響きをまとっている。

「は、あぁ、んっ、うっ……あぁ……」

 薄闇の中、行灯に灯した火が白い肌を照らす。天を向いた喉仏が、喘ぐごとに震える。薄い胸を反らすと、浮いた首筋の線が陰影をより深くした。長い萌葱色の髪が上下運動のたびに波打ち、不安げに揺れる。
 肉棒を秘孔に迎え入れて、青江は自ら体を動かしていた。その表情はこの上なく甘美にとけていて、苦しそうでいながらも快感を受け入れている。
 青江の下で仰向けになって彼を穿つ石切丸は、きつく絞られて眉を寄せた。

「くっ……青江く、も……」

 律動に石切丸は顔をしかめる。上に乗る青江は喜悦の息を吐くと、甘く乾いた声で言葉を紡ぐ。

「いいよ……イきなよ、僕の中で……」

 妖しい瞳が、石切丸をより昂らせる。青江は密やかに梔子(くちなし)色の目を細めた。腰の動きが速まり、石切丸は短く唸る。中の締まりがより強くなった。間もなく石切丸が遂情し、そこで青江が動きを止める。

「んっ……く、あ」

 ずっぷりと奥に突き刺したまま、青江の狭い中に精が吐き出される。青江は汗を浮かべた体を震わせて、「あぁ」と熱に濡れた声を零した。
 そうして、果てた石切丸の男根を中に沈めたまま、彼は自身の屹立に手を伸ばす。先走りの蜜を垂らしていやらしく照らされた性器は、数秒もしないうちに白濁を撒き散らした。
 石切丸の胸に迸った体液が、小さな炎を反射して光沢を生み出す。
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