短篇集

□わがまま
2ページ/21ページ

 鶴丸は涙でぐしゃぐしゃになった顔で、一期を見上げる。そうして喘ぎすぎて痛む喉から、声を絞り出した。

「い、ちご、一期……」
「なんですかな?」
「ほど、ほどいて、くれ……」
「嫌です」

 鶴丸の要求はあっさりと突っぱねられる。鶴丸は顔を歪めると、一期の足元へと芋虫のように擦り寄った。

「い、イきたい……た、のむ……」

 金色の冷たい瞳が鶴丸を見下ろす。無様な彼の姿に、一期はしばらく無言でいたが、やがて静かに言い放った。

「この程度なら我慢できると言ったのは、貴方でしょう。まさか、感じてたまるかとおっしゃったのをお忘れですかな?」

 鶴丸はふるふると力なく首を振った。

「あぁ、おれ、おれが悪かった……! あっ、なんでもする、するから、おねがいだ……あぁっ! いか、イかせてくれ……!」

 一期はにこりと微笑む。

「また学習してないのですか。言葉遣いには気を付けましょうと、何度も言ったはずですよ?」

 スラックスのポケットの中に、一期は手を入れる。カチリと音がして、なにかを操作したのだとわかった。突如、鶴丸の中の振動が激しくなる。震えているのは張形の方ではなく、小型の性具のようだ。体内でいきなり暴れ出した人工物に、鶴丸はたまらず白い裸体を反らした。

「ぁひゃぅ! いやぁ、あぁぁぁ!」

 絶叫に近い声を上げて、鶴丸の体がびくびくと跳ねる。このままだと鶴丸が気をやってしまうと思ったのか、一期はすぐに振動を元に戻した。

「で、なんと言うのですかな?」
「おねがい、します……イ、イかせてくださ……なんでも、ひますから……!」
「はい、よく出来ました」

 一期は爽やかに笑う。
 そうして、鶴丸の性器を縛り上げていた紐を解いた。
 しかし一期が解放してやったのは、その箇所だけだった。

「えっ、そ、そこだけ……?」

 鶴丸は困惑したような顔をする。一期は首を傾げて、鶴丸を見下ろす。

「なにを言ってるんです? これでイきたい放題じゃないですか。さぁ、思う存分精液を撒き散らしてください」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ