短篇集
□優柔不断/恋人未満
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「だめ、イってしま、あぁっ」
甘い痺れが脳を犯す。いやいやと首を振っても、快楽に抗う手段にはなりえない。
「あ、ァ──!」
前と後ろの弱いところを弄ばれて、宗三はとうとう吐精した。
口を離さないまま宗三を見上げる薬研の喉が、こくりと上下する。それを信じられない思いで見下ろして、宗三ははっと目を見開いた。
「薬研、なにを」
「ん……、うまかったぜ」
空っぽになった口でそう言われて、宗三は脱力感と倦怠感を覚える。いちいち飲み込んで、しかも感想まで言わないで欲しい。照れ隠しでもなく、宗三は本気でそう思った。
「おい、今のは俺の指でイったんだよな」
後ろから顔をのぞき込んで、不機嫌そうな長谷部がそう尋ねる。すかさず薬研が言い返した。
「なに言ってんだ、今のは俺の口淫で極めたんだ。なぁ宗三?」
下半身に力が入らず、どうにか上体を起こすだけで必死の宗三は、どちらとも言えずに困惑していた。第一、どっちも同時だったから達してしまっただけだ。決定的なことはなにも言えないで、宗三は「えぇ……」と言葉を濁す。
「どちらも……良かったですよ」
たおやかに言ってやれば、長谷部と薬研の目付きが鋭くなる。そうして二人は宗三へと迫るなり、ぎらぎらした瞳を向けた。