短篇集
□ロストシークレット
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「大丈夫だとかなんとか言ってたが、ここまで耐えることもないだろう。おい、大丈夫か?」
気遣うように鶴丸が顔をのぞき込むと、一期は苦しそうに顔を歪める。青ざめているというよりかは発熱したように顔を赤くしている一期に、鶴丸はふっと笑った。
「君、ちょいと保健室に行った方がいいかも知れないな」
その言葉に、一期がはっと目を開く。そして半袖シャツから覗く片手が介抱しようとするのを、慌てて掴んだ。
「いいです……ほんとに、大丈夫ですので……」
弱々しく吐き出された声は、震えを隠せていない。けれどその瞬間、今度こそ一期は机に倒れ込んだ。
「──っ!」
「本当に大丈夫か? あまり無理はしない方が……」
スラックスのポケットにもう片方の手を入れたまま、鶴丸がそう言う。一期はもうなにも答えられなかった。見兼ねて、鶴丸は息を吐くと教師に向かって行った。
「すまない、やっぱり保健室に連れて行った方がいいみたいだ。彼、熱出てるぜ」
一期の額に手を当て、確かめるように言う。教師はそれを見て頷いた。
「わかった。保健委員は確か……」
「御手杵だったな。けどあいつは寝ちまってるから、代わりに俺が連れて行ってやるよ」
御手杵の方に視線が集まる。
「ぐー」
名指しで呼ばれた件の彼は、机に突っ伏して熟睡していた。
「……。それなら、鶴丸に任せよう。粟田口とお前なら、別にサボって悪さもしないだろう」