短篇集

□光忠の貞操観念はゴムより薄い
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 スタンドライトの光が目に痛い。
 眩しすぎると思って明かりを落とそうとしたが、手が届かないことに気付いて諦めた。ベッドサイドのローテーブルは、シングルベッドの真ん中にいるとはいえ少し遠すぎる。移動しようにも、今はできないからもどかしい。
 まぁ、これぐらい明るければ見やすくなるだろう。
 光源から目を背けて、視線を前に持っていく。そこには俺が今体をずらすことができない原因が乗っている。なにをしているのかといえば、現在進行形で俺の上に跨り、一糸まとわぬ姿で腰を振りたくっていた。

「あっ、あっ、あ……っ、は、あ……」

 一心不乱。言葉にするならば、その四文字が適当だろうと思った。
 光忠は俺が明かりのことについて考えているとは気が付かないまま、狂ったように自ら腰を動かしている。光忠の尻穴には俺の勃起したペニスが入っていて、光忠のいいところをいじめている。というか、光忠が俺を使って自分をいじめているというのが正しい。自分の好きなペースで抜き差しして、敏感な場所に当てて、外して、それを繰り返すことで絶頂のタイミングを待っている。
 俺はシーツの上で仰向けになったまま、その光景を静かに見ていた。冷静な思考は保たれていたが、下半身はどうしようもないほど興奮している。相手は男で、自分より背が高くて体格もよく、しかし胸はない。なのにこんなにも下半身に血が溜まっているのは、光忠の今の姿が扇情的でかつ官能的だからだろう。
 抜けるように白い肌、程よく目立つ腹筋、胸筋。その中央で存在を主張するのは、つんと尖った二つの大きな乳首。さっきまで散々自分で弄っていたからか、真っ赤に腫れ上がってしまっている。欲情に濡れた声を隠しきれないで、掠れた吐息はさっきからずっと上がりっぱなしだ。律動に合わせて揺れているのは、なにも声だけではない。艶のある黒髪は額や頬に張り付き、湯上りの雫を細かに散らしている。しっとりと濡れた前髪のあいだから覗くのは、恍惚に細められた目。うっすらと見える蜜色の瞳は、完全に快感に溺れていた。
 ぐちゅぐちゅと粘り気のある水音も手伝って、光忠は一人で高みを目指している。
 さしずめ、光忠のアナニーを手伝っているようなものだ。なにか面白くない。そう思った俺は腹筋を使って体を起こし、光忠を後ろに倒しながら組み敷いた。
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