妄想曲

□月と狼
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それは切望に空を仰いだ 狼少年の話

愛し子羊 まるで生贄
何をも知らず 微笑むばかり
君は子羊 まるで残酷
僕に似合わぬ ひだまりのよう

無垢は時に罪 君を知らなければ
この痛みもなにもまた
嗚呼 知らぬのに

無慈悲な神よ 僕がこんなにも
何かを望むのは 初めてなのに
それさえも 叶えてはくれぬのか
今宵も満月(つき)は そう昇る

これは熱望に身を焦がした 狼少年の話

僕は狼 牙持つ獣
人のフリする 爪持つ獣
意識表層 月に揺らめき
何をも知らぬ 獣と果てる

購えない罪 僕が全体
何をしたと言うのか 誰か
嗚呼 教えて

理不尽無情の罰 君を
ただ想うことすら 許されぬなら
今の僕は何になるだろう
今宵も月は そう照らす
刹那 目を掠めた のは何?

月が沈み 悪夢が果てても
この身に刻まれてる 幾多の傷が
嫌でもまた この現実へと 戻す

非情な神よ 僕の存在
そのものが 重罪だとしたら
いっそこの感情ごと 僕を
埋葬(ころ)してくれれば 楽なのに

冷酷不条理の罰 共に
過ごした時間 さえ今はただ
僕を傷つけるだけだから

今宵も月にそう吼える

今宵も月にそう喘ぐ

それは絶望に月を呪った 狼少年の話
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