赤髪と行く
□出港
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「あ、あの、1つだけ、聞いてもいいですか?」
「?」
「何であたしなんかを、その、仲間にしたいと思ったんですか?
あたしなんか、強くもないし、女だし…」
また声が萎んでゆく。
あぁ、やっぱ聞かなきゃよかったなぁと後悔の波が押し寄せてくる。
そんな気持ちが伝わっていたのだろうか、彼は事も無げに言った。
「ひとつは、面白そうだからだ」
え、と声が漏れた事に気付き、慌てて口を塞ぐが聞こえていたらしい。
彼はいたずらがバレた時のような、苦笑いのような、はにかむようななんとも言えぬ表情を見せた。
(あ、そんな顔も出来るんだ…)
不覚にも心臓が跳ねた。
ドクン、ドクンといういつもより速い振動は不思議にも不快ではなかった。
やがてすぐに"それ"は収まった。
(何だったんだろ、今の…)
無意識にそっと胸に当て、鼓動を確認するが、いつも通りの心拍に戻っていた。
「?」
ふと、シャンクスが不思議そうな顔をしてこちらを窺っているのが目に入り、慌てて会話を再開させる。
「あ、えと、ひとつってことはまだあるんですか?」
「ああ、それなんだが…「おーいお頭!!」……悪い、呼ばれてるらしいな、明日の朝、迎えに来るから今日は帰っていいぞ」
「え、ちょっ…」
呼び止めようとすれば彼はもう船の方角に向かって走り去っていってしまった。
(あぁ、気になる…)
そうは思うものの、結局どうしようもないので家に戻ることにした。
(ん、?明日の朝って言った?)
ザッと顔が青くなる。
「は、早い……」
とりあえず、今は家に戻ることにした。
「海…」
不意に、自分の父親の事を思い出した。母と結ばれ、私が腹の中にいると知った途端、ふらりと行方を晦ましたと聞いた。
私の意識なんてなかったから、正直父親がどんなものなのか想像も出来なかった。
(ただ…小さい頃に友達だった子が母親と父親と手を繋いでいるのを見た時はどうしようもなく悲しくなったっけ…)
もう10年以上も前の事なのに、今でも鮮明に覚えている。
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〜幼少期〜
「ねぇ、母さん!」
「なぁに?」
「どうしてあたちにはおとーさんがいないの?」
「…………そうねぇ…」
「皆言ってるよ!
なんであたちの家はおかーさんしかいないの?って!
ねぇ?おとーさんは!
あたし、"おとーさん"に会ってみたい!」
今思い返せば、無茶苦茶な事を母に言っていたなと苦笑いをこぼす。
あの時の母の困ったような、怒ったような顔は今でも忘れない。
「父さん…」
会ったことも、声も聞いた事ない。
でも今は、会ってみたいと何故かそう、強く想った。