赤髪と行く

□出港
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そっとネックレスをつけてみる。
金属特有のひんやりとした感触が妙に心地いい。

外見からは見せないようにそっと服との隙間に滑り込ませる。

「大切にするよ、母さん」

「そうね、きっと父さんも喜ぶわ

本当は生まれて来るまで一緒にいるつもりだったらしいんだけど、
急に『新しい海図が手に入った』
って言ってすぐに出てっちゃったのよ」

「なんか父さんっぽい」

顔を見合わせて2人で笑う。
穏やかな夕食の時間が過ぎていき、
いつの間にか夜になっていた。

「母さん、あたし明日行くよ」

「分かった、気をつけてね、怪我にも注意して、それから…」

「分かってるよ」

あははと笑いながら最後のお世辞を聞き流す。




唐突に、抱きしめられた。
母の温かい匂いが鼻腔を擽る。

「母さん?」

「あんたがいなくなったら多分寂しくなるわね。
でも、それでもあなたにはもっと世界を見て欲しい。
世界を見て、沢山の人達と触れ合って欲しい。
世界は危険と隣り合わせだけどそれと同じくらい、いいえ、それ以上に楽しいことがあるはずだから」

そっと母の顔を窺えば、僅かに光ってるものがあった。

じわり、と視界が滲んでいく

「母さん……」

何も言えなくなって、ただ、母の匂いに顔を埋める。
そっと思った。

(この温かさは、あの人に似てる)

「母さん、あたし決めたよ。
あたし、もっと強くなる、この魔法みたいな能力の事もちゃんと学んで、
母さんの心配事をひとつでも無くせるように頑張るから…」

だから泣かないで、

と言いたかったのだけれど、
続けることは叶わなかった。

声がそれ以上出てこなかった。

「リゼ、大きくなったわね…」

私の力がなくても、1人で立てるぐらいに、




夜が更けていく、
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