赤髪と行く
□船に揺られ
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船に乗って早1週間、
襲い来る敵船や、荒れ狂う嵐に立ち向かっていったりと、落ち着かない日々を過ごしていた。
なんて、そんな非日常みたいな生活は全くなく、
至って普通の生活を送っていた。
ただ、生活の拠点が海から陸へと変わっただけ、
(もう…)
結論を言うと、暇なのだ。
凄く暇。
掃除や洗濯は余りある体力を持っているクルー達がやってくれる。
仕事くらいさせてよと言うと
お前は女何だからとあしらわれる。
毎日が宴の彼らにとっては私の心情など、分からないだろう。
(私、お酒飲めないし…)
1度、私が船に乗った当日に歓迎会みたいなものを催されたのだが、
そこで飲まされた酒のキツさといったら…
(毎日あんなのを飲んで
よく死なないよね…)
若干の尊敬を含んだ目で
今日も宴騒ぎの彼らを遠巻きに見つめる。
「はぁ、」
何度目になるかわからない溜息をこぼしていると、
呑気な声が降ってきた。
「今日も良い風が吹いてるな」
ちらり、と後ろを見やれば、
予想通りの人物が立っていた
「シャンクス、」
「 どうした?そんな陰気臭い顔して」
ちなみに初めのうちは敬称を付けていたのだが、シャンクス自身が遠慮、また自分も慣れなかった為、
今の形に落ち着くのは早かった。
「暇だなって」
「酒飲むか?」
「いらないよ、あたしがお酒飲めないの知ってるくせに」
「まぁそういうなよ、すぐに飲めるようになるさ」
どこかに飲まないという選択肢はこの人の頭の中には無いのだろうか。
むかっとするものの深呼吸して落ち着かせる。
せっかく2人になったんだし、あの事を聞いてみるのも悪くないだろう。
「ねぇ、シャンクス、ずっと聞こうと思ってたんだけど」
「ん?」
「何で私を船に乗せたの?
ちゃんとした理由が知りたい」
「…………」
シャンクスが黙るとは思ってなかった
はぐらかされるかもと思っていたあたしにとっては予想外の出来事だった
黙っているというより、考えているの方が正しかったかもしれない
''言うべきか否か"
そんな様子が見て取れた。
もう一押しするか、
と口を開きかけた時、
「いいじゃねぇか、お頭。
どの道遅かれ早かれ言う事になるんだ」
「ベン…」
副船長、ベン・ベックマン。
彼はこの船の頭脳である。
なにか大事な決め事をする時は必ず彼の意見が必要不可欠だと、自己紹介の時にシャンクスが付け足していた。
彼の絶大な力が船長を押したのだろうか。
腹を括ったようにあたしの目を見つめてきた。
「俺の部屋に来い、そこで話す」
くるりとマントを翻して歩いて行く姿に少なからず不安を覚えた。
(あんな表情、初めて見た…)
今までおちゃらけたおじさんみたいな感じの空気を纏っていたのに、
今の彼の空気は海賊の船長という言葉が一番似合っていた。
その時、頭にぽんと手が置かれた
「ベン…」
「辛気臭い顔すんじゃねぇ、
何かあってもあいつが側に傍にいてくれる」
「……うん」
覚悟を決め、
シャンクスが消えていった船内へと足を運んだ。