赤髪と行く
□気づく
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それからさらに1週間が過ぎた。
最近、1つの悩みの種がある。
それは……
「おい、リゼ
いい酒が手に入ったんだ!一緒に飲まないか?」
ひらひらと手を振って、
こちらに来いと言わんばかりの表情で笑うあの人。
彼が笑顔を絶やす事はなく、どんなに船員達にからかわれても怒る事はなかった。
その笑顔が、仕草が、自分の聴覚や視覚で捉えると途端に動悸が激しくなる症状に現在悩まされていた。
(まただ……)
規則正しい心音を奏でていたはずなのに、もう不協和音を奏でだしている。
ぐぅっと胸を掴んで落ち着かせる。
そんなあたしの摩訶不思議な行動を心配してか、シャンクスはこちらに歩み寄ってきた。
「大丈夫か?
顔色が良くないが、医者に見てもらった方がいいんじゃないか?」
ぐい、と顔をのぞき込まれれば、距離が縮まるのは至極当然のこと、
「………!
なんでもない……」
至近距離で目が合ってしまい、動悸のスピードは速くなるばかりだ
なんとか鎮めようと、シャンクスから距離をとる
「今日は他のクルー達に呼ばれているから、また後でね」
そう言い残し、そそくさとその場を後にする。
甲板に1人寂しく残されたシャンクスは半分程無くなっている酒瓶を片手に立ち去ったリゼの方向を眺めていた。
「あいつがいた方が、何となく酒がうまく感じられたんだが…
やっぱり酒は嫌いなのか…?」
ふ、と誰かの気配を感じて振り向けば、そこにはベックマンが煙草をふかして船の手すりにもたれかかっていた
「お頭…、」
一瞬、物言いたげな顔をして、
何やら思案した後、
ベックマンは何も言わずにまた煙草をふかした。
その様子を不思議に思い、
シャンクスは話しかける
「どうした?何か言いたいことがありそうな顔をしていたが…」
「いや、こういうのに顔を突っ込むのはやはり野暮だと思ってな」
ベックマンの言いたいことが分からず、首を傾げるシャンクスを横目で見ながら、
(お頭もお頭だが、あいつもあいつだな…)
と、1人考えながら、煙草の煙をゆっくりと吐き出す。
それは少し冷たくなってきた潮風に運ばれ、すぐに消えていった