仮面少女は王様の姉
□三枚の葉
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「(及川先輩と岩泉先輩か…。会うのは二ヶ月ぶりだな…。)」
四月とは言え、東北はまだ肌寒い。
冷え性の飛鳥は、自分のジャージの上にさらに飛雄のジャージを着て、マフラーを巻いていた。
澤村に買ってもらったピザマンを両手に持ち、ハムハムと口にする。
先ほど、飛雄が菅原と話したいと言った為、飛鳥は飛雄から離れた。
多分、青葉城西が要求してきたSの事だろう。
「(菅原先輩は本当に良い先輩だ。普通だったら、一年にレギュメンの座を奪われたら怒るのに。)」
飛鳥は中学の先輩を思い出す。
一年の最初の練習で、飛鳥は試合最初から高い技術を誇った。
その時の先輩のSは飛鳥に嫉妬して、次の日から嫌がらせにあった。
「(ここの先輩達は、本当に烏野を強くしたいんだなぁ。)」
「飛鳥ーっ、そろそろ行くべー!」
「は〜い!」
「飛鳥の家はどの辺だ?」
「私は蛍や忠の近くです。」
「…あぁ、そうだったな。じゃあ月島と山口。飛鳥を頼む。」
「わかりました‼︎」
「…はい。」
飛鳥は黙って隣の飛雄の手を軽く握り、月島達と一緒に曲がった。
飛雄は飛鳥が行った方向をじっと見ている。
事情を知っている為、流石に誰も言えない。
菅原が小さくその肩を叩き、歩くように促した。
「…俺、今まで姉さんが嫌がらせを受けていたなんて知りませんでした。」
「飛鳥は何も言わなかったのか?」
「あぁ。母さんが俺から姉さんを遠ざけていたのもあるけど。」
飛鳥は去年の試合の後、病院を退院したら東京の父方の祖父母の家に泊まっていた。
二学期からは月島や山口の中学に転校して、二人と仲良くなったらしい。