同情するならお茶をくれ

□茶柱も死亡フラグも立ったとはこのことか
2ページ/2ページ

目を覚ます
痛いところはないので多分手入れをされた。
多分鶴丸、それから石切丸のところの審神者がしてくれたのだろう。
ぼう、と部屋を眺める
小綺麗にした部屋は、どこかの旅館みたいだ。
本丸の中ってこうなってたんだな、と。バカなことを考えて更にバカなことを考える
「お茶を、飲みたいな…」
できれば抹茶がいい。苦すぎず甘すぎずの抹茶。
舌触りが良く、香りもいい。
そんな抹茶を拵えたい。洋菓子でも和菓子でもいい。でも俺は和菓子のほうが好きかな。
甘いけれど抹茶に合うような和菓子が好きだ。洋菓子もいいが。
「おきましたか?」
すっと開けられた障子の先には今剣がいた。
平安の刀だったか?
鶯丸も平安の刀だったな
「ああ、おきた。おかげさまで。」
「よかったです。うごけますか?」
「大丈夫だ。俺は何日間寝ていた?」
「……ふつかです」
「二日。」
それは大分寝ていたようだ。
刀剣の身体は食事は必要ないらしい。妖怪も神も飯はなくて大丈夫的な風潮があるからだろうか。
そんな風潮はよくしらんが。
「うごけるなら、おおひろまでみんながまっています。そのままでもいいですか?」
みればジャージに着替えさせられていた。
内番服じゃないか。密かにテンションがあがる
「ああ、大丈夫だ。ではいこうか。ついていけばいいか?」
「ええ、だいじょうぶですよ」
「よろしくたのむ」
布団から這い出て、今剣についていく。
障子の前に立って、開ける
ずらりと並ぶ刀剣男士。
ぱっと見いないのは日本号と明石、長曽根、物吉、そして鶯丸、か。
じ、と上座を見る
「…」
見覚えのない男がそこに鎮座していた。
きっとコイツがここの審神者なのだと、わかった。
鎮座する彼の前に正座する
「鶯丸様。調子はどうでしょうか」
「大分ましになった。感謝する。…それと、様付けはやめてくれないか?」
「………ええ。では鶯丸。単刀直入に、お願い致します。我が本丸の刀剣になっていただきたい」
「……」
「返事はすぐにとは言いません。落ち着くまでここにいる、とでもいいです。ただ、返事はいただけるとありがたく存じます」
「………」
「…鶯丸…?」
「顔を、上げろ」
「えっ?」
「俺はそんなことされるような奴ではないから。どうか顔をあげてほしい。話はそれからだ。」
俺人間だしな!
「!はい!」
と、審神者は顔を勢いよくあげる
「では返事だ。ああ、快諾しよう。よろしく頼む。」
「えっ??」
「だから、この本丸の刀剣になりたいといったのだが…?」
審神者がぱあ、と顔を輝かせる
「ありがとうございます!」
「あと、よければ、なのだが」
「はい!」
「茶飲み道具一式を買いたいのだが…(あ、でもお金はないな)…やはり聞かなことにしてくれ」
「あっどうぞ!!!!好きなものを買ってください!」
「いいのか?」
「ええ!でも買いに行く時は私に一言声をおかけください!」
「わかった」
よかった。ここでもお茶は飲める!
「えっと、ではご飯の用意をします!!」
「…俺は」
「あ、えっと!どうぞお待ちください!大丈夫です、もう出来ているので!」
「……夕餉の時間だったのか。すまないな、引き伸ばしてしまって」
「いえいえ!」
「あるじー!手伝ってー!」
「はーい!では!」
今剣のごとくばびゅーんと去っていく審神者である
一人、否ひと振りになった時、後ろから抱きしめられる
「っ、すまない、すまない…かたなを、むけてしまって。ほんとうに、すまない」
「………鶴丸、安心しろ。俺はまだ生きているぞ」
正面を向きながら震える鶴丸を撫でてやる
ぴたりと震えが止まったかと思えばぐりぐりと頭を押し付けてくる
なんなんだ
ただでさえ目立つ立ち位置なのに鶴丸のおかげで更に目立っている気がする。
仕方ないのでそのままずるずると引きずって適当な席に腰をおろす
「鶴、隣座らないのか?」
「座らせてもらおう。」
ざっという音が付く勢いで隣に座る
「……鶴、なぜそんなに俺に構うんだ?」
俺といたって楽しくないだろうに。というか俺は鶯丸じゃあないしな
「それは…きみが」
「俺が?」
「そこまでにしておけ。無理をするな、鶴丸」
「?……へし切長谷部か」
無理をしている?鶴丸は鶯丸のことが嫌いだったか?まあ、いろんな刀いるしな。
「…。鶯丸。」
「なんだ?」
「………なんでもない」
「??そうか」
どいつもこいつも情緒不安定だな。気のせいか?
まあ気のせいにしておこう。


黙って座っている、何故か正座である。
何故かって?
癖に決まってるだろう。
え?何故その話をしたかって?
なぜか視線が集まってきているからだ!なんで?
…あ、夕餉が運ばれてきた。なんか豪勢な旅館料理みたいだな
と、こういう時は上座の人が先に食べるんだったか。
ちらりと審神者を見る
箸を置いてこちらを見てくる。
まさか俺が食べるまで食べないのか?
……こういう儀式なのだろうか。刀剣乱舞の世界ってこわいな
一口分、煮物を摘んで口に運ぶ。
「……!?」
ぶわり、と、何かが沸き起こる感覚に襲われる。
視界の端に桜の花びらが写る
あれ、この本丸、今は確か秋の景趣だったような。
…ああ、そうか、この花びら、俺から、鶯丸から出ているのか。あれだ、誉桜。これって誉取った時に出るものだけど、感情が高ぶっても出るのか…
「おい、しい。」
ぽろりと言葉が飛び出る
人間だったときに、初めてたててもらったお茶を啜ったときに似ている。
そういえば美味しいものなんてお茶しか食べたこと…いや、飲んだことなかったな。

思考を巡らせ、感傷に浸っていると広間がどっと騒がしくなる。

代わる代わる俺を見て泣いたり(なんで?)、抱きしめたり肩を組んだり話しかけてきたり、その他諸々、色々とされた。
なんでだ?
それにしても食べ物がうますぎてどうでもよくなってくるな。作ってるのは燭台切か?

飯を平らげて、はたと気づく
寝床をどうするのか、である。
それと風呂だな。気分的に。
「なあ、鶴」
宴会(?)が終わってからもうごかない自分にひっついている鶴に話しかける。
「どうした!?」
がば、と勢いよく起き上がる
「……寝床は、そのへんの縁側にでも寝そべっていればいいか?」
別に寝床はなくても生きていける。許可さえ降りれば!
「え」
「?」
鶴が息を呑む。
ああ、そうか。そこらへんとかに寝そべったら邪魔になるか?
「っっ、!」
がし、と音が響く。
鶴が俺の肩を掴む
告白かな?と適当な事を思ってしまう。
「鶴、」
「っ、き、きみの、部屋は、ある!」
「そ、そうなのか」
鶴の迫力に若干引きつつも答える
「だから…そんなこといわないでくれ…!!」
「…??あ、ああ」


なんか話噛み合わない…?
まあうん、気のせい、か…?

案内してもらった自室(になる予定?)にいって敷いてあった布団に潜り込む。

一瞬にして意識が沈んだ
次の章へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ