樋口一葉を応援する話(夢)

□3話
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part3.デートをさせる
デートとかマジで言ってるのか、正気を疑うぜやれやれ。之を書いたのは誰だ?うむ、私だ。
ならば責任を取るのは私だ。ということでやっていこうと思う。

やり方はそうだな、うん、この辺で説明を入れよう。
私の能力はバフ、デバフの効果が色濃く出ている。バフデバフがわからないならばググってどうぞ。まあ兎も角、私の能力はそれだけではない。
私の能力というのは要は自分の一部を相手に一時的に移植する、増強するという能力だ。
正直この能力さえあれば今やっているミッションなんて赤子の首を捻るどころか息を吸うようにできる。

でも其れではつまらないだろう。

決して巫山戯ている訳ではない。
私が勝手に彼女や彼の思想を改変したところで其れは一時的なものだ。長続きなぞするものか。
其れに相手は芥川龍之介だ。効果が切れてバレて殺されるのが落ちだ。
其れ以前に樋口一葉を悲しませたくない。
私が死ぬことに?否、私の能力のせいで芥川龍之介が自分のことを好きになったと錯覚させられたのだと気づいてしまうことに。
気づいてしまうだろうし、気づいたら其処で私は終わり、GAME OVERだ。
だって彼女だけは傷つけられてはいけないのだ。
まして私のような者には。


まあ説明はこの辺でいいだろう。
本題じゃ本題。しんみりした話は私にはできないからね。
ええとなんだっけ?そうそうデートデート
上記で散々反則だとか宣っておきながらなんだけど此れから芥川龍之介に能力うちま〜す
一時的に買い物行きたい衝動に駆られるというだけだからセーフだってぽたぽた焼きの裏に描いてあるおばあちゃんが言ってたからセーフ。
「異能力『破戒』 名、 島崎 藤村  対象、芥川龍之介 該当思念、衝動(買い物)」
成るべく買い物に行きたいという思念を混ぜ乍言葉を走らせる

扉が勢い善く開く音が響き少しだけ吃驚する。
カツカツと軽快なヒール音を響かせながらこちらに向かってくる。
「おい 島崎」
「はい何ですか」
「買い出し…」
「買い出し?行くのですか?嗚呼そういえば樋口先輩が今日予定空いてましたよ。私は用事があるので若し時間がありましたら此方を買っていただけると嬉しいですね!」
とある遊園地の住所とその遊園地に売っているキーホルダーを所望している紙を手渡し其の場を離れる(やだ ちょう あつかましい)。
用事?二人を尾行という重要任務があるじゃないですかヤダー

という事で遊園地ですよ。
まあここまで来る迄にいざこざがありましたがそこはスルーしましょう。
此処迄来て安心と思いましたがところがどっこい遊園地には危険がいっぱい!
まあ主に探偵社と鉢合わせなんですけどね。
え?ギルド?ワタシヨクワカンナイナー
脳内で戦っている最中に肩にぶつかられる
ばしゃりと水音がしてそちらの方向を見ると大の男の服にジュースがかかっていた。ちなみに隣に女がいたので屹度デート中なんだろうそれにしてもちゃらいなこいつら
「申し訳ございませんでした」
社交辞令で頭を下げると男からは血管の切れたようなコミカルな音がして私を怒鳴り散らす
「申し訳ございませんでしたじゃねえだろ!お前のせいで掛かったんだろ!?弁償しろやオラァ!」
う、ヴァ…随分と古風なチンピラですね…うんざりする。
さてどうしたものか。因みに考えている間も怒鳴り散らしてくる。
此処で暴れられると困るんだな之が。気づかれる。今はまだ大丈夫だが其れは時間の問題だ。
ここは多少強引だが異能力を使うしかな
「あっあの…!もしもひ!けっ、警察でしょうか!?あ、あの、はい、はい恐喝というか脅迫というか…兎も角早く来てください…!」
―その手があったか
あ、いやそういう事ではないのだろう。
「テメェ…チッ!」
明らかに電話をした青年を睨み付けて去っていく
後でお礼をしにいくか…
「あの、大丈夫ですか…?」
「大丈夫です。ありがとうございますな…」
「すな?」
「いえ、青年と言おうとしたら口が滑りました。お気になさらず。」
ええ、気づいている人は気づいているでしょうが目の前にいるのはかの芥川龍之介を殴り骨折させた張本人(本獣?)、人虎改中島敦でございます。
「敦くん敦くん、クレープ買ってきたのにいないから吃驚し…おや?」
おや、というよりおんやぁ?という音の方が正しいのではないのだろうか。
ご存知太宰治です
「どうも太宰さん」
「久しぶりだねえ 藤村 ちゃん。ここであったが百年目―さあ一緒に心中しようじゃないか!」
「え?お知り合いですか?」
「―…この人の前の職場の同僚でした。処で太宰さん不抜けた態度料金としてクレープいただきますね。どうぞ青年も」
「はい!…はい?はい!!??前の職場って…ええ…?」
「わあい酷いなー…」
大の大人がいじけた態度を取る
「あ、あの太宰さん僕のクレープで善ければ…」
「駄目ですよ青年。彼は甘やかすとすぐ付け上がるので甘やかしてはいけません。」
「は、はあ…」
「処で何故君がこんなところに?」
「先輩…まあ上司とその上司の監視ですね。」
「監視?」
「観察が趣味なもので。結構一緒ですよ観察と監視って。」
「いやいやいやいや…」
「じゃあこんなところで油売ってていいのかい」
「駄目に決まってるじゃないですかF○○k」
「なんで私にだけそんなに辛辣なのかな!?」
「まあまあじゃれてるだけですって」
「其れを君が言っちゃうのがなあ!」
「今彼らは買い物中です。私も少し休憩していましたので時間は大丈夫なんですが。」
店舗をちらりと見てから彼らに目線を戻す
「彼らと貴方達を合わせるかけにはいかないので…いいですか」
彼らの肩にそれぞれ手を置き成るべく凄い剣幕で言い寄る
「今すぐ帰ってください」
更に懐から水族館のチケットを二枚取り出し太宰治に押し付ける
「そして此処に行ってください」
もう来るなと思いながら半ば強制的に見送る

因みに買い物が終わる間に
あ!あれは(私が一方的に知っているだけの)坂口安吾だ!と思って見ていたら商品のぬいぐるみを持ち上げて双黒時代に見せたこともないような顔で笑っていました。
そっと見なかったことにしていたら二人が出てきたので監視を続ける
「芥川先輩、その、折角ですし乗っていきませんか…!」
遊園地の乗り物を指差す樋口一葉の言葉に耳を傾け
「……嗚呼、折角だ、やるからには全力で乗るぞ樋口。僕は手を一切抜かぬ」
「はい!」
ぐ、と拳を握り締めて好戦的な笑顔になる樋口一葉を見て私は昇天する
「尊…無……無…」
単語になっていない言葉を発して何とか立ち直り監視を続ける


結果を言おう、私には眩しすぎた。
樋口先輩尊すぎない?無理なんだけど…最早神の域…。
無邪気に笑っている樋口一葉と普通に楽しんでいた(のだろう)芥川龍之介という事実を確認できたのでデートはクリア。
屹度この件で芥川龍之介が欠片でも意識しただろうから其れもクリアだ。もうそれでいいのだ。私は疲れた。

さて帰るか、と私は遊園地を出る
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