カカイル小説

□帰り道
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「すっかり遅くなっちまった」
カバンを斜めがけにしながらオレは校門を出た。
二日前からカカシさんは任務に出ている。帰りは明日の予定。
それまでに溜まった仕事を片付けようと職員室で居残りしていてこの時間だ。
「あー腹減った」
月が出ていない夜道。オレは家路を急いだ。

 おかしい……。
商店街を抜けた辺りで異変に気付く。
後をつけられている?
気配は消しているのに、でも存在はオレに分からせるように。
一定の距離を保ちながら。

 たかがアカデミー教員の中忍。狙われる覚えがない。
もう少し相手の出方を待つか。
外灯がない路地裏に入る。次の角を曲がったら瞬時に屋根へ跳ぶ。
そう、オレは跳ぶはずだった……。


 それは一瞬の出来事だった。


 息を呑むより早く、オレは背後を取られ身体を密着されていた。
相手の左腕が首に回され、身じろぎひとつもできない。

 オレより格段に上の忍だ。
何もできない。額に冷たい汗がにじんだ。
オレはゴクリと喉を鳴らす。その喉を絡んだ腕で軽く圧迫される。
楽しんでいる? 
お前などいつでも殺れる、と。 

 どくっ、どくっと鼓動が早くなる。 
落ち着け!!
オレは脈打つ心臓に叱咤する。

 しかし殺意を全く感じない。コイツの狙いは一体何だ??
すると接触していたオレの尻に、オトコ特有の熱を帯びた塊が膨みはじめるのを感じた。

 回した前腕でオレの顎を上に向かせ、耳に息を感じる程の距離で囁かれる。

「やらせろよ」

 空いた片方の手でオレの下腹部をゆっくりと撫で回しながら……。





『ん、ぎゃあーーーーーーーーーー!!!』

 静寂した夜空にオレの素っ頓狂な声がこだました。
変質者だ。
変質者が出たーーーーーーー!!

 オレは適わぬ相手と知りながらも懸命に抵抗する。てか、喚き散らした。
「離せ! バカ! アホ! ヘンターーイ!!」
「ちょっ、静かにして!」
オレの口を塞ぎにかかった変質者は明らかに動揺していた。
そのちょっとした隙を狙いオレはガブリと手甲をしている掌を思いっきり噛んでやった。

「痛ッ!! オレです、イルカ先生、オレですってば」

 この声は……。
「んが??」
腕の力を弱められ振り向くと、雲の切れ目から月の明かりが漏れて、うっすらとした銀色がオレの目に入った。
そこには任務を終えたばかりのカカシさんが立っていた。



「ちょうどイルカ先生が歩いているのが見えたから、ちょっと驚かそうと思って後をつけたんですけどね」
ヤレヤレといったふうに格段上の忍は、オレが噛んだ左手の手首を軽く振った。
「イルカ先生ってホント忍らしからぬ行動をとりますよね、読めません」
オレは痛いところを突かれ恥ずかしくなる。バカ、アホって……。
「カ、カカシさんこそ里の中で気配消すとか止めて下さいよ! あぁもう、ビックリした」

「でも、センセ」
カカシさんは口布の下の口角をニヤリと上げた。
「ちょっとゾクッとしませんでした? レイプ的で」
「バ、バカ言わないで下さい!」
顔がみるみる赤くなっていくのが自分でも分かる。
ふふ、上忍は笑う。
「オレは興奮しましたよ」
「また、そーゆー事を言う! それじゃあ本当に変質者ですよっ」
オレの反応を楽しそうに見つめるカカシさんが憎らしい。

「疲れました。さっ、早く帰りましょう」
ねっ、とカカシさんはオレの手を取り歩き出した。とても任務帰りとは思えない足取りで。
ホントに疲れているのか?

 家に帰ってからの事を想像するととますます顔が赤くなる。
それに気づかれないように、オレは俯きながらカカシさんの後を追った。




終わり


「やらせろよ」が書きたかっただけの話。サスケにも言わせたいな。
pixivに投稿した時より若干書き足してあります。

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