カカイル小説

□カラオケ
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 オレは今ナルト達の上忍師、あの“はたけカカシ”先生と二人でカラオケボックスにいる。
何故こうなったのか?
部下達に、先生行ったことないのか? と笑われたカカシ先生から、
「イルカ先生、連れて行ってくれませんか?」
とお願いされたのだ。
オレなんかに頼まなくたって、いくらでも付き合ってくれる女性がいるだろうに。

「カカシ先生、何にしますか?」
はい、とメニューを開けて渡す。
「えっ?」
「ワンオーダー制なんですよ。先に注文しちゃいましょう」
「あっ、そうなの? あー……イルカ先生にお任せます」
カカシ先生は閉じたメニューをオレに返し、部屋の中をキョロキョロ見渡し始めた。
明らかに場慣れしていない。そーだよな、上忍様がこんな小さな店に来たりはしないだろう。
オレはリモコンで適当にフードを注文し、二人分のフリードリンクを取りに行った。

「それじゃ、歌いますか」
「あーはい。そーですね」
「入れますよ。曲名を言って下さい」
「オレ人前で歌った事ないから。照れるなぁ」
カカシ先生はそう言って頭をガシガシとかく。
「えっ、そーなんですか? うは、明日自慢してやろっと。みんなに教えなきゃ」
「オンチだって?」
天下の写輪眼がオンチ? ……なにそれ美味し過ぎる!
もしそうだったら、ナルト! サスケ! サクラ! すぐに報告してやるからな!

 イントロが流れた。
カカシ先生はテーブルにあったマイクを手に取り人差し指で口布を下ろした。
げっ、イケメンじゃん……。
よし! これでオンチこい! オンチこい!

 スローなラブソング?
野郎二人でこの選曲かよ……。

 低音の甘い声が聞こえてきた。






 誰がオンチだって?
ヤバい……囁くようなちょっと掠れた声は腰にくる。
男の歌声になに反応してるんだよオレ!!

 一体どんな顔して歌ってやがる、と目をやるとカカシ先生はソファに浅く座り前のめりになって大画面を見つめていた。
暗がりな照明に銀の髪だけが光っている。
じっと見ていたオレの視線を感じたのか、チラリと目だけをこちらに動かした。
そして歌いながら隠されていない右目をゆっくりと細め、綺麗な笑みを浮かべた。

 確信犯?



「失礼しまーす。ご注文の品お持ちしましたー」

 若い女の店員が扉を開け、部屋の音量が一斉に外に流れ出す。
とっさにオレはリモコンの停止ボタンを押していた。

「どうしました? イルカ先生」
既に口布を上げていたカカシ先生が小首を傾げた。


 だって、
カカシ先生の歌声を他の誰にも聞かせたくなんかなかったから。




終わり


井上さんの声で子守歌。

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