カカイル小説

□ハブラシ
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 Dランク任務の帰り道。山に囲まれた夕暮れのあぜ道を歩いていた。
いつもは騒がしいナルトが今日はやけに大人しかった。
そのおかげでサスケとの衝突も無く任務は滞りなく遂行できたのだけど。

 静かなのは良いが、明日もこのままだと流石にこっちの調子が狂ってしまう。
とぼとぼ歩くナルトにとうとうサクラが声をかけた。
ナルトは、あ〜う〜と迷っていたが、ようやく意を決したかのように話し出した。

「今朝イルカ先生の家の前を通ったら先生に呼び止められたんだ。まだ時間があるなら朝飯食べてけって」
「それで?」
「そしたら流し台の側にハブラシがあったんだってばよ」
ナルトの話しはよく飛躍する。慣れたサクラは足りない部分を頭で補い理解する。
「毎日使うモノだし、水場に置いてあってもおかしくないでしょ?」
ナルトはサクラの顔の前でピースサインをする。
「2本」
「え?」
「コップに色違いのハブラシが2本あったんだってばよ!」
「それって……」
「な? サクラちゃんもそう思うだろ?」
「彼女、よね?」
話したナルトだけではなく聞いたサクラまでもがズーーーンと絵に描いたように落ち込んだ。

 そんなやりとりを後ろから見ていたカカシが声をかけた。
「何でおまえらがへこむの? そりゃイルカ先生だっていい大人なんだから恋人ぐらいいてもいいでしょ?」
「そうかもしんないけど、イヤなんだってばよ!」
「イルカ先生はいつまでも私達だけの先生なんだから。一人だけのモノになるなんて、ねえ」

 もの凄い独占欲。
親離れ出来ていないナルトはともかく、サスケに恋するサクラまでもがそれを言うか? とも思ったがカカシは黙っておいた。

「あーーーやっぱり納得いかない!」
ナルトが叫んだ。
「こうなったらオレも先生ンちにハブラシを置く! でもって今晩はお泊まりするってばよ」
そう宣言した後、それがすごく良いアイデアに思えてナルトは満面の笑みになった。

「あっ、待ってよナルト、私も行く! サスケくんも行くでしょ?」
走り出したナルトの後を追うサクラが振り向いて、分かっている返事を確認するかのように訊ねた。

 今まで黙っていたサスケがどう出るか? カカシは見下ろし観察していた。
サスケは唇を一瞬尖らせた後、頬を赤らめ、ああ、と小さく呟いた。

 サスケ、おまえもか。

 ハブラシの色は何にする? と楽し気に語らいながら夕日に向かって駆けていく3人をカカシは見送る。
まだ解散の合図はしていないのだけど。

 イルカ先生、あんた愛されているねぇ。

 ポケットに突っ込んでいた片方の手を取り出し、銀色の髪をガシガシかいた。
ま、しょうがない。今日はおまえらに先生を譲ってやるよ。

 カカシは今夜の約束を違えてしまう式を、そっとイルカの元に飛ばした。




終わり 


第七班+イルカ先生……好ゅき♡

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