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□★代償
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「ああっ……はあっ」
細い喘ぎ声が引っ切り無しに口から漏れる。
苦しくて、辛くて。

今夜のカカシはいつもと違った。こんな酷い抱き方をする男ではなかったはずなのに。
ただ苦痛を与えるだけの性交。

イルカは覆いかぶさり緩慢な律動をただ繰り返すだけのカカシを虚ろな目で見遣る。
揺れる銀色の隙間から覗く、深藍色の瞳と目が合った。しばらく見つめた後、動きを止めぬままカカシが口を開く。

「ねえ、誰を見てるの?」
「……? 誰って……あなたを……」

腰を掴まれ激しく奥を突かれる。

「んぁっ!」
「先生、オレを見てよ」

……だから、あなたを見てるのに。

イルカは終わらない夜を恨めしく思う。
もう何度もカカシの吐きだしたものを体内に受けている。
身体が限界を訴えている。ただ人形のように揺さぶられるだけ。しかし雄は正直でイルカの意思とは関係なくまた勃ち上がる。

突然抱きかかえられ身体を反転される。それだけでも痛みが伴うのに、胡坐をかいたカカシの膝に乗せられる体勢をとらされた。
自らの重みが加わりより深くカカシのモノを捻じ込められイルカは悲鳴を上げた。

「先生、見て」

呼吸を整え重い瞼を持ち上げると、真正面の大きな鏡が背後からカカシに抱かれている自分の姿をありありと映し出していた。
思わず目を見開いた。
カカシのモノを銜えこんでいる秘部も、自分のいきり勃っているモノも全てが晒されている。

自分はなんて顔をしているのだ。
目は焦点が合わず物欲しそうに潤み、湿った黒髪はうねるように乱れ頬に張り付き、だらしなく開いた口元からは垂れた唾液が糸のように顎を伝って零れている。

まるで遊女だ。

イルカは顔を背ける。

「ねえ、先生。目を開けてしっかり見てよ」

イルカは弱々しくかぶりを振る。

嫌だ! 見たくない。
こんな自分を見たくない。

嫌だ! 見られたくない。
こんな自分の姿を





あの子には……



「もう、許して」
顔を反らし瞼を固く閉じる。




「許さないよ」



イルカはびくりと身体を強張らせる。

許さない?

カカシは何を許さないと言っているのだ?

嫌な汗が流れ全身が緊張する。


恐る恐る顔を上げると、鏡の中のカカシと目が合った。
氷のように感情を表さない冷ややかな眼差し。





……知っている?



「あなたを誰にも渡さない」


カカシはイルカの膝裏に手をかけ両足をぐいっと限界まで広げ、激しく揺さぶった。
「嫌ぁだ、やめっ」

そう叫んでいるのに、やめてと訴えているのに、身体の熱はまた快楽を求め昇り詰めていく。

「っん、ああっーー!!」

一段と高い声を上げながらイルカは果てた。
その証である液は鏡の自分にめがけ飛び散った。

はぁはぁ、とイルカは浅い息を吐き続けながら、ぐったりとする身体をカカシの胸に預けその光景を見つめた。
白い体液は重みを増しドロドロと表面を垂れていく。

まるでイルカ自身を穢すかのように。


「あーあ。先生、汚れちゃったね」
カカシは何処か嬉しそうにそう言い、イルカを愛おしそうに抱きしめる。

「オレはね、どんなに汚れた先生でも、放さずに愛し続けますよ」
そして鏡のイルカに見せつけるように、肩から項に沿ってゆっくりと舌を這わせた。



汚れている……

穢れている自分。

こんな自分はあの子に相応しくない。
あの子の傍にはいてやれない。



あの光り輝く子の傍には……




カカシの腕の中で失望の微笑みを浮かべたイルカの頬に、一筋の涙が伝った。




終わり


お蔵入りになっていた作品。自分のサイトだったらいいよねと解禁に。
『浮気の定理』の続きとして書き始めたけど、イルカ先生のプラトニックでもいいかなぁと思ってみたり。
まぁ何にせよ浮気はダメよという話。
 
        撮影終了後
         ↓ ↓
    

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