BOOK
□抱きしめたいけど
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Sayaka side
「みるきー東京いくんやってねー」
突然やった。美優紀はうちには言ってくれへんかったのに。本人からやなくて友達から聞くのは辛かった。
「あ、そやね、うん」
そっけない返事になってしまったけどそれどころじゃなかった。
それからというもの毎日美優紀の笑顔を見る度にほんとに東京に行くのかって聞きそうやった。でも、美優紀から言ってこぉへんのやったら嘘かもしれんって思い込んでずっと聞けなかった。
そうすればついにこの日が来てしまった。
その日、私は美優紀の家の前にいた。
「彩ちゃん、あのな」
「ん?」
「あの……うち東京行くことになってん。東京の大学でどうしても勉強したい事があるんよ。」
「うん……」
わかってたことやのに現実を突きつけられた感じがして上手く言葉を出せなかった。
「それでな……出発今日やねん。今日の最終バスで東京にいく。」
それは知らんかった。美優紀とおられんのがあと数時間しかないって思ったら私は美優紀の手を引いて海まで走っていた。
「はぁ……はぁ……」
「なしたん?急に?」
「…………海綺麗やな」
掌を水平線と平行にして眺めると光が反射してトビウオみたいに海を跳ねてた。
「せやね……
あのさ、彩ちゃん。……うちら別れよう?うちの勝手なんはようわかっとるんやけど。やっぱり遠距離って大変やん?お互いに縛られて今みたいな関係でおられんくなったら嫌やねん。」
「うん……せやな……。」
ほんまは別れたくなかった。やけど美優紀と同じで別れないでいた時遠距離は大変やからって今の関係が崩れるのも嫌やった。
「やけど……もう1個うちのわがまま聞いてくれへん?」
「……ええよ。」
「あのさ……もしもうちが大学卒業して戻ってきた時にお互い誰とも付き合っとらんかったらもう一回やり直してほしいねん。ほんまにうちわがままよな。ごめん。」
「ええよ。ほんまはうち別れたくないねん。せやけど美優紀の夢のためやから我慢する。やから2人とも相手がおらんかったらもう一回やり直そう?もし美優紀に彼氏か彼女がおったらきっぱり諦めるから。」
「うん!」
わがままやけどそれが美優紀らしくてやっぱり大好きやねん。