【非攻略ルート】軍師編

□四章、行き違いの終着点
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「─────もう残ったのは君だけだ。僕も妹弟子を殺したくはない。今からでも帝国に忠誠を誓えば許すと皇帝陛下は仰っている」
それは、ライトセーバーこそ色は変わっていないものの、目つきと口調が完全に変貌したアナキンだった。アンヌはフォースを読み取り、すぐに彼が完全なダークサイドに堕ちたことを悟った。とうとう恐れた事態が起きてしまったことに彼女は悲哀を込めた眼差しを天井に投げかけた。それから変わってしまったアナキンを一瞥し、憐れみを込めた視線を向けた。
「───なんと哀れな。何故ここまで堕ちる必要があったのですか」
「妻が死んでしまうんだ!!僕が、僕が暗黒面の力を手に入れないと……僕がシスさえも超越する最強のジェダイにならないと彼女は死ぬんだ!!!僕は手に入れる。ブレイン、お前にはない力をな!!」
アナキンは支離滅裂な言葉にならない言葉で叫んだ。それを聞いた彼女はもはや彼を救うことは不可能だと悟った。そして、先ほどのクローンを殺す時よりも深いところに心を沈めると、完全に生き物の情愛を棄てた冷酷な軍師の表情を見せた。
「お前はたしかに最強だ。───けれど、私の受けた訓練には負けるであろう」
「お前の受けた訓練?ハッ、人でなしにするあのトレーニングか?あんたはあれで完全に人格を壊した!その皮の下には常にダークサイドが満ちているんだ!僕よりな」
「いいや、違う。私の力は勝利をもたらすためのものだった。そして力をコントロールするだけの力もあった。───お前は完全に力の虜となったのだ。つまり、お前は力に負けたのだ」
核心を突かれたアナキンは怒りを顕にした。それこそがアンヌの策略とは知らず。彼はそのまま跳躍し、彼女の目の前でライトセーバーを振り下ろした。
───かかったな
 アンヌはそのまま横へ避けて、聖堂の上を目指した。501大隊に援護射撃されては困るからだ。案の定、プライドの高いアナキンは部隊を引き連れては来なかった。これで、一対一となる。追いついたアナキンの光刃と彼女の光刃が激しく交差した。彼に比べて力が弱いアンヌは鍔迫り合いでは弱い。自らの弱点を熟知しているゆえに、彼女はアナキンの力を敢えてそらすような状態に持ち込んだ。彼が冷静さを失っている今、フォースでは彼女のほうが強いという確信があった。廊下の横に立てられている石像をアンヌはフォースで一瞬にして倒し、アナキンの行く手を阻み、時間稼ぎをした。
 ──時間切れだ。
彼女は引き際も知っていた。だから最期にいっそ刺し違えるなり信用を得て油断させるべきと思い、ライトセーバーを消した。
「────助けなさい、あなたの大切な人を、あなたの思うやり方で。初めから私たちの意見は合わなかったからね」
「…………今更だな」
アナキンもライトセーバーを収めた。彼女が受けている訓練の真髄の内容を彼はくわしくは知らなかった。それは、表情と、考えが矛盾していても一切表に出さずに話をする主に詐欺師が使うものだった。だからアナキンはなんの違和感もなく彼女を信頼できたわけだ。
 そして、死の決意を固め、友との永久の別れの審判を自らの手で下そうとしたその時だった。横から突然一人の見知らぬ若いジェダイが飛び出し、アナキンを切りつけようとしてきた。彼は間一髪で避けたが、隙ができた。すかさずアンヌは彼にとどめを刺そうとしたが、別のジェダイが止めた。
「何をするのですか」
「もうだめです!皇帝は我々の力だけでは倒せません!ですからブレイン様は生き残ったジェダイの皆を連れて逃げてください!」
「でも───」
「あなたは、ここで死ぬのではなく、もっと多くの人々に希望と策を与えるべきです」
そう言った瞬間、彼女が何かをいう前にそのジェダイの胴体をブラスターが貫通した。501大隊の応援が下から来たのだ。絶命する最後まで、そのジェダイは彼女に逃げろと目で訴えた。そして、気づくとアンヌは他のジェダイを従えて逃げていた。後ろはブラスターの雨が降り注いでいて、一人、また一人と倒れていった。それでも彼女たちは走り続け、やっとの思いで発着ベイまでたどり着いた。そこにはオーガナ議員が密かに用意した輸送船があり、彼女は他のジェダイを待った。既に周りはたったの10人に減っており、数えている間にもまた3人倒れた。
「何をしているの!早く乗りなさい」
アンヌは必死に叫んだ。すると、一人が駆け寄ってきた。彼女はそのジェダイを乗せようとした。すると───
 一瞬の間のことだった。次の瞬間、彼女は後ろに押され、輸送船にのせられていた。
「離陸してください。」
冷たく言い放つジェダイに、彼女は動揺した。
「どうして!!?あなたたちも乗るのよ!」
ジェダイは首を横に振った。
「あなたは、ここで死んではいけません。我々はあなたを守るために、ここまでお連れしたのです。ここにいる皆が、あなたを助けるために最後まで戦う覚悟を決めたのです」
アンヌは涙を流しながら叫んだ。
「だめよ!そんなの!私も残るわ」
「ありのままをお伝えすれば、あなたはきっとお残りになる。それゆえ、嘘をついたのです。………お許しください。」
ジェダイはそう言うと、再びクローンたちに向き合った。彼女に最期の意地を見せて。
「フォースと共にあらんことを!」
呆然とするアンヌだけをのせた輸送船は、広大な宇宙へと飛び立った。
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