迷い雀は如何鳴く《碧瓶》

□朝
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カチャカチャ

じゅっ

ゴポゴポ

ぐつぐつ

ぼっ


器具のぶつかり合う音や薬品が泡を吹く音、火のつく音が仄暗い教室に木霊する。
担当教師であるセブルス・スネイプが教室内を監視するかのようにぐるぐると練り歩く為、生徒らは違う意味で緊張感を出していた。


ふわり


なにやら芳ばしい香りが鼻先を擽る。
ん?と首をかしげ、生徒が皆匂いの方を向く…。
「ミス・キララザカ…何を、しているのだね」
いかにも怒りを孕んだ声音で、ゆっくりと溜めて声を上げたのはスネイプ。
目線の先に二人の友人の姿を確認し、ツボミはまたかと大きな溜息を零す。
二人の大鍋には他の生徒の鍋とは違い、白くホカホカと湯気を立てる艶やかな新米が炊かれていた。

「先生、今から全米が泣いたみたいな事言いますね!」
「何だそれは…」
「新米を炊いた!」
「トマギャグセンスだろ」
ピキピキと音が聞こえる様でツボミは頭を抱えた。
すると横から男の子が声をかけてくる。
「大丈夫?」
ハリーだ。
ハリー・ポッター
彼は同じクラスで具合の悪い私を気遣い、自分のグループに入れてくれたという奇跡的な聖人君子なのだ。
「あまり無理はしない方がいいわ」
斜め前に座るハーマイオニー・グレンジャーも心配して言う。
この前の箒の授業で体調を崩し、危うく空から転落する所だったからだろう。
「うん、ちょっと…ね」
ツボミの目線の先に気づいたのか
うわ、と声を上げる。
「あの二人、またやってるのか」
「ロン、あなたとは仲良くできそうじゃない?」
「ハーマイオニー、ロンに失礼だ」
「ははは…」
かわいた笑みを浮かべるが内心気が気じゃない。
嗚呼、なんでこんな事に…いや、確実に私達が悪いんだ。私達が悪い事に違いはない。
あの日、あの手紙さえ受け取らなければ……






九月某日

「あー今日も超暇だったな」
「ちゃんと授業受けなよ」
「いやいや、ジェロの授業は真面目に受けれないだろ」
「まあ、ジェロ…は、ね…」
学校への不満を垂れ流しながら歩道橋を渡る。
がさり
鞄の中から紙の擦れる音が聞こえ、ハッと
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