灯火
□プロローグ
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少年を優しく包み込んだ二つの影は、陽子と氷華、二人の体だった。陽子と氷華は少年を強くそして優しく抱きしめていた。
強く抱きしめていた腕を少し緩め、陽子が口をひらく。
「誠? 無事?」
「陽子……姉?」
「よかった。無事みたいね。」
「氷華……姉?」
少年が無事な事が分かり二人は安堵の笑みを浮かべる。
「俺は…何…を……」
少年は何が起こったのか、今の状況が理解できずに呆然としていた。
すると先程まで少年を包んでいた優しく暖かな重みが消えていく。
少年を抱きしめていた二人の体は、少年の体からまるで糸を切られたあやつり人形の様に、力無く、そして無惨にゆっくりとずり落ちていき、冷たい地面に崩れる様に倒れ込んでいった。
少女達の体が離れた少年の手は真っ赤に染まり、地面には生暖かい真紅の液体が、なみなみと入った花瓶の水をこぼしたかのように広がっていく。
「えっ……」
目の前には、真っ赤に染まる自分の手、まるで真紅の絨毯のように広がる真っ赤な液体、そして自分の両脇で倒れている大切な人。
少年は全てを理解した。