□写真
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 翌日の朝7時30分。
 約束の1時間前であるが、いつもより少し早い朝食を終えて、ジョルナとジョセフは
杜王グランドホテル324号室から、承太郎を送り出すところであった。

「じじい……分かっているとは思うが くれぐれも……余計なことはするんじゃあねーぜ」

「分かっとる分かっとる」

「ジョルナはまだ何か隠している……それをどうするのか確信が持てねー今……信用し
 きって隙を見せるのは危険過ぎるぜ。 ヤツはただのガキじゃあ ねーんだからな……」

「分かっとるからッ とっとと行かんか!」

 くどくどと言い含ませる承太郎に『どっちが祖父か分からんわい!』と背中を押して
追い出すジョセフを見て、ジョルナはまた面白くて笑った。

 ジョセフは杜王町に着いた当初と比べて、最近は見違えるほど元気になっている。

 耳は遠く、足腰は弱く、ボケも始まって久しかったが、今は聞き返すことも殆ど無い。
杖も持たず散歩に出るし、明瞭で明確に物事を考えている。

 彼に《何もしていない》と言ったら嘘になる。しかしジョルナは危害を加えていない。
2〜3年時間を戻しただけだ。ジョルナ以外知らないことだが。胆石も白内障も、ジョ
セフの肉体には無かったことになっている。感謝されこそすれど、危険危険の一辺倒は
心外だった。もちろん下心はあったが、ジョセフに元気で居て欲しいのはジョルナの本心だ。

 幼いころ抱き上げてくれたジョセフは、どこか父に似ていて安らいだのを覚えている。

「(流石にそこまで『戻す』わけにはいかないけれど……)」

「まったく口うるさい孫じゃわい……いつからこうだったのか……いや昔からじゃったか……」

 恐らく件の旅のことを思い出して言ったのだろう。ジョセフは飲み物をローテーブル
に2つ置くと、ジョルナをソファーへ誘った。

「さて何から話そうかのぅ……旅の始まりは知っておるか?」

「ホリィさんが……パパの縁で発現したスタンドに耐えられず危篤だった……
 からですよね?」

「そうじゃ……娘は、ホリィは持って50日の命だった……。わしらはDIOの肉体で
 ある……おまえさんのもう一人の父とも言えるジョナサン・ジョースターからの運命
 に引きずられてスタンドを発現したが、おっとりして平和ボケしとるホリィには耐え
 られなかった……。 娘が生き残るには因縁を……DIOを始末しなければならなか
 ったんじゃ……」

「それが無くても……パパはスタンド使いを集めて何かしようとしていた……」

「……ああ。既に承太郎の所へと、第一の刺客である花京院を送り込んできていたよ……」

「花京院さん……」

「……知っておるかね?」

「いいえ」

 名前は聞いたことがあるかもしれない。しかし、ジョルナは会ったことがないのかも
しれない。館に来た者たちを振り返っても、彼女には思い出せなかった。

「旅の終わりに死んでしまったが……承太郎の親友とでも言うべき男じゃったよ……彼は。
 まだ17、8才で『ハイエロファント・グリーン』というスタンドを持っておった。
 花京院が……彼が居たから、わしらはDIOのスタンド『ザ・ワールド』が時を止め
 るスタンドだという事が分かったんじゃ……」

 おもむろにジョセフは懐から財布を取り出して、中の写真をジョルナへ示した。
男たちと犬が写っている、背景が砂漠の写真だ。

「承太郎の隣に居るのが花京院じゃ。そのとなりがアブドゥルで、スタンドは炎の
 『マジシャンズレッド』前列の銀髪の男がポルナレフ、素早い騎士のスタンドで
 『シルバーチャリオッツ』じゃ。わしの抱いている犬がイギーで、砂のスタンド
 『ザ・フール』……生き残ったのはわしと承太郎、そしてポルナレフだけじゃ。
 そのポルナレフも、今は消息が途絶えておる……」

「……なにかあったんですか?」

「スタンド使いを生む『矢』が 元々DIOの元に有ったのは知っておるじゃろ。その後
 『矢』の行方を調べていたのじゃが……イタリアへ飛んだ辺りから消息が掴めなくな
 ってしまったんじゃ……」

「それもあるのに、今は杜王町がこんなだから……助けに行けないんですか?」

「そうじゃな……もしかしたらフランスに戻っているのかも知れないが……。ここ杜王
 町でも『矢』が2本見つかっておるし……。スタンドの凶悪犯罪というものは、一般
 人には感知できんが、至る所で起きておる。なかなか行動出来んもんでなァ〜……」

 ゴクゴク……とジョセフが喉を潤す。

「(この少数精鋭にパパは負けたのね……スタンド使いは『つるまない』って言ってた
 けど、それが弱点)」




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