虹の本

□ある日2
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普段は食べ物が並ぶ卓上に、ノートや参考書を広げる。
皆、家を留守にしている。ウォルは相変わらずだし、クラウドはバイク。
フリオは大学に資料を届けに行きティーダはブリッツ。
ルーネスはクラウドに着いて行った。
まぁ、騒がしいよりはマシなのだが…
(困った…)
そう、困ったことに
(昼飯を作ってくれるやつがいない)
普段はフリオが何かと作ってくれるのだが…いないとなると話は別だ。
あまり自分は料理をしたことが無い。今までは作らなくてもいい環境だったからだ。
(早く帰ってくると思ってたが…)
考えが甘かった。作り置きでもして貰えば良かったかもしれない。
冷蔵庫を開けても野菜がいくつかあるくらいだった。冷凍ものもない。
「くっそ…」
何故こんなときに限って…
例え作ったとしても上手く出来るかはわからない。味は保証できないし、胃に入ればいいだろうという考えもない。なんせ、
(フリオの料理で舌が肥えてしまってる…)
あいつは見た目も華やかで味もバッチリでどこかのシェフが作るようなものばかりだ。調べたりしているのか?
以前、ティーダがフリオはお嫁さんになれるっすね!と言っていた。あの時は男だろと思ってたが、出来ないよりはマシらしい。今回、改めてそう感じた。
クラウドのように黒焦げにするような失敗はしないかもだが、もし、やってしまったらウォルからの説教だ。
(説教は嫌だ)
1、2時間は持っていかれてしまう。ティーダやバッツが怒られているところをどれだけ見てきたか…
しょうがない…
(食わなくてもいいか…)

「イェーイ、腹減ったただいま!」

玄関からティーダ並の騒がしい声が聞こえた。ずかずかと入ってきたのは、我ら家族の四男、バッツだった。
「よ、スコール。腹減った、フリオは?」
「…生憎、留守だ」
「んー…そうか。でも、腹減ったしな」
そういえば、コンビニという最強の味方がいるではないか。
適当におにぎりでも買おう。
財布を取りに部屋へ行こうとすると、肩を掴まれた。
「スコールもまだだろ?よーし、俺が腕を奮ってやるよ!」
「…いや」
「まぁまぁ、ここはバッツお兄ちゃんに任せな!」
グッと親指を立て笑うバッツ。そういえばこいつの料理はあまり食べたことがないな。
「な?な?」
「…何を作るんだ」
そーだな…と冷蔵庫を覗き、いろいろ手に取っていく。
「スコールはテーブルの上片付けろよ〜」
エプロンをつけるバッツ
(似合ってない)
「何ができるかな〜」


「ほい」
テレビを見ているとごとりと、目の前に置かれる。
見た目は、まぁまぁよかった。
「ドリアみたいにしたんだけど」
フォークを突き刺し、伸ばすとチーズがでろりと伸びる。中にはトマトらしき赤いものも入っていた。
口元へと運ぶ。
「?…どう?」
「………」
「なんか言えよ、感想!」
足元をつつかれる、痛いんだやめろ。
(…バッツもキッチンに立っちゃいけないんだな)
「えー…どれどれ…。…え?普通に美味いけど?」

また1人、キッチン立ち入り禁止が増えた。



「俺、いっつもこんなん食ってるぞ?」
(…感覚が鈍ってるんだ)
「野宿して、キャンプしてんだけど…」
(キャンプ?)
「そこらへんの入れて調理してんだぜ?」
(そこらへんってなんだ!?)
「キャンプ!?バッツキャンプしてるんすか!?」
(さっきまでいなかっただろ、地獄耳か!?)

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