虹の本

□ある日5(上)
1ページ/1ページ

「あ、クラウド」
突然、後ろから話しかけられ振り向くとフリオがいた。
「この後買い物に付き合ってほしいんだけど…」
「晩飯のか?」
しかし、今日は普段は忙しいウォーリアが家にいる日である。
一緒に食べているのには変わりないが、
「外食でもいいんじゃないのか?たまには」
「ん、そうか?」
「フリオも羽休めすればいい」
「…俺は鳥じゃないけどな」
ウォーリアにも提案しようと、携帯を取り出す。
ポチポチとボタンを押し、送信する。
フリオがそれを黙って横から見ていた。
視線が刺さる。
「?どうした?」
「打つのが早いな」
フリオが鞄から彼の携帯を出す。クラウドはガラケーだか、フリオは最新のスマホというのを使用している。
「未だに慣れなくてなぁ…」
「フリオは家事はできるのに、そういう所は不器用なんだな」
この間から某料理番組を見始めたのはそういう事だ。
今まではパソコンで料理を調べていた筈が、違うサイトへ飛ばされたりなんだりと色々あったらしい。
一般に、機械音痴というものなのだろうか。
「クラウドも最新のにすればいいんじゃないか?」
「俺はこうやってボチボチ押すのが好きなんだ」
そうなのか、なんだか意外だ、なんて思いながら歩くフリオ。
クラウドのことはこれでもだいぶ知ったように思ってた。
(そう言えば、)
最初に訪ねた話は、料理の好き嫌いだったな。
あの時、クラウドはなんて答えたっけ?
たしか…
「…っぷふ、ははっ」
「…?どうした。急に笑い出して」
「いや…懐かしいこと、思い出したよ」
なんだ、なんだよそれ、聞かせろと急かすクラウドを横目にフリオは歩みを進めた。
「教えろよ」
「ん〜言ってもいいんだけど…」
(意外と子供っぽいんだよなぁ)
「クラウドが嫌いな食べ物のことなんだけど…」


「あ、クラウドとフリオ!!」
気がつくともう家の、近くまで来ていた。そこには、ちょうど帰ってきたのかティーダとスコールがいた。
「ただいまっす」
「ただいま」
「おう、ただいま」
「…」
隣には、耳まで真っ赤にし俯くクラウドがいた。
「?クラウドどうしたっすか!?」
(どうしたんだ?)
「あぁ、いやーあはは」
「フリオ…なんでそのことを…?覚えてるんだ。お、おれは」
「いや、クラウド落ち着け。俺は別にからかったわけじゃ」
「忘れろ!俺はもう大人になった!」
「うわ!わ、わかったから。な?な?」
クラウドが勢いよくフリオに飛びかかり、襟を掴んで叫んだ。それをフリオが謝るかのように背中をさする。
状況がつかめない双子は黙ってそれを見ていた。
「なあ、スコール。あれどういう事?」
「…さぁ」
「フリオ、忘れろ?とっくに昔のことだ、それは!」
「わかったわかった、もう言わないから。近い近い…!!」
「おい、こんな道端で揉めるなよ。近所迷惑になるが?」
「そうっすね、スコールの言うとーり!!」
双子に、強制され家に入っていった三男と五男であった。




『ねぇ、どうしたの?』
『…っう。』
『ないてる?』
『じ、が…っぴ…が』
『?』
『にんじんとピーマン食べれなかった。』
大きく青い瞳が涙で宝石のように綺麗だったのを覚えている。
『嫌いなの?』
『にんじんさんとピーマンさんが追いかけてくる…うぐぅ』
『だ、だいじょうぶだよ、きっと』
小さな頭をこてんと横に傾ける。
彼の金髪が揺れた。
『食べれるように、俺が美味しく作る!』
『…でも』
『にんじんさんとピーマンさんが追いかけてきても追い払うから!』
『、うん。おれも、食べれるようになる』
『うん、約束!』




(可愛かったな…にんじんさんか)
(くっそ、なんでそんな約束覚えてるんだよ、この!)

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ