虹の本

□ある日5(下)
1ページ/3ページ

ガチャリと聞き慣れた音が家に響き渡る。
「ただいまっすー!」
「ただいま」
ティーダが大声で、それに続きスコールも喋る。
今日は、長男のウォーリアが休みで家にいることからいつも以上に声を張る。
しかし、そのウォーリアからの返事が無い。
フリオが間を開けてから言う。
「ただいま」
しかし、いくら待っても一向に返ってこない。
クラウドも、おかしいと思ったのか少し眉を寄せていた。
それは皆同じである。
(可笑しい…朝からウォーリアは居たし、どこかに出掛けたという事でも無さそうだ。)
家を留守にする際は鍵を必ず掛ける、というのはウォーリアからしっかりと教えこまれている。
その本人が、だ。このように空っぽにする訳が無い。
ウォーリアの靴は、ある。黒く、艶のある革靴がいやに光っている。
何かがあったとしか言えない状況だ。
「おかしいな…誰もいないのか」
「で、でもウォーリアの靴、あるっすけど」
「…泥棒?」
「どっ!??泥棒っふが!」
クラウドの発言に驚いたティーダが仰天し大声をあげる。それをスコールが慌てて塞いだ。
「静かにしろ、本当にそうだとしたらどうするんだ!」
「んぶぶ、んん〜」
双子が抑え込んでいる一方、兄2人は物音を立てずに静かに靴を脱ぐ。
そして、クラウドは自分の鞄を、フリオは玄関に置いてあった箒を手にリビングへと向かう。
双子はそれに気づくと大人しくついて行った。
こんなに静かなのは初めてかもしれない。フリオは少し汗をかいていた。
それはクラウドもティーダもスコールもである。なんせ、この家に、そんなものが入ったことなどないからだ。少なくとも記憶には、無い。
クラウドがリビングのドアノブに手を掛ける。
ゴクリと唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえた。
「…行くぞ?」
4人、顔を合わせ頷き、構える。
ガチャと開けた瞬間、4人は突撃した。
「「「「うぉぉぉおおおおお!!」」」」
「「ぉぉおおかえりぃい!!」」

『………え?』

しばらくの、フリーズ。そこにはエプロンを着こなしたバッツとジタンがいた。
クラウド達は状況が読めず固まる。それはバッツ達も同様だった。
「…」
「…え〜と…これは?」
そして、静か過ぎる空間を裂くように、

「ただいま。あれ?皆何してるの?」
「ただい、ま………」

例の、ウォーリアがやって来た。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ