囚われた人形は
□プロローグ
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主人公side
「ほら、早く寝よう。ね?」
1976年、8月、午後8時。
フランス、ブランシュ家では、1人の少女が5歳くらいの子供に言い聞かせていた。
「いーやー!まだ遊ぶの!」
「明日お昼に眠くなっちゃうよ。……そうだ!お話何か呼んであげようか?」
少女ーメルが子供に言う。
正確には、メルは人間ではない。人形だ。3年前に完成した、ただの関節人形だ。
ただ、ちょっとした手違いで命を持った、人間のような状態になり、今はブランシュの姪として魔法使い連盟に登録されている。
「んー、じゃあお姉さまも一緒に寝て!1人で寝るのヤダァ。」
子供はそう言って抱きつく。
人形であるメルに睡眠は必要ない。だが、別に眠れないわけじゃない。
(6歳の双子は……いい子に寝てるようね。)
ブランシュ家には今3人の娘がいる。メルが今相手をしている子以外にも、一つ上に双子がいるのだ。
耳を澄ませ、隣の部屋の様子をうかがう。何も音がしないので、どうやら寝ているらしい。
「仕方ないなぁ。じゃあ、一緒に寝よう。」
メルは子供と共に布団に入り、数分後には寝息をたて始めたのだった。