囚われた人形は

□第1章 ー夏休みというものー
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視界が反転し、着いたのは古い屋敷。

メルは無造作に椅子に座らされた。

「貴様の名前は?」
ヴォルデモート卿が言った。

「メル・ブランシュ。」
メルは答えた。

「貴様はどこまで、この組織のことを知っている?国際魔法使い連盟については?」
ヴォルデモート卿は言った。赤い目が不気味に輝いている。

(人形の私に、開心術なんて使っても意味ないんだけど……。)
翡翠色の目は静かにヴォルデモート卿を見つめる。

メルは魂も何も宿っていない、ただただ魔法で動く人形だ。

ニコラス・フラメルが本物の人間に似せようと頑張ったため、体に関しては触っても人間との区別はつかない。人によっては多少冷たく感じるくらいだ。

だが、その体には臓器も魂は入っていない。飲食したものは即効で魔力に還元されるだけであり、そのため真実薬のような薬も効かない。また、魂がないから吸魂鬼に襲われることもない。

死の呪文が効かず、餓死することもできない体を持つメルは、ヴォルデモート卿相手でも、何も言わないという態度を貫くこともできる。

だが……。

(答えておいた方が後々消し去るのに楽かな……。)
禁じられた呪文が通じないメルは黙秘し続けることも可能だ。
だが、相手に致命傷ではない回答をもたらし信頼されることでスパイとなり、魔法使い連盟に情報提供したら……?ヴォルデモート卿成敗は容易くなる。

メルには体力や精神力といった概念はない。永遠に動き続けることも可能だ。思考は持つが心を持たないから心も読まれない。そして、もともと人形であるため、万が一破壊されても国際魔法使い連盟にはダメージがない。最もスパイには最適なのだ。

「あまり多くのことは……。あなたたちが血筋を尊び、マグル生まれを排除しようとしていること、そして、国際魔法使い連盟があなたたちを敵対者とみなしていることしか……。」
メルは言った。

ヴォルデモート卿は開心術が通じていないことを知らないのか、気にしていないのかわからないが、ただ「そうか。」と頷いただけだった。
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