囚われた人形は

□第1章 ー夏休みというものー
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「さて、メル。貴様は何歳だ?」
ヴォルデモート卿は言った。

「え……。」
年齢という概念がないメルは言葉に詰まる。

ヴォルデモート卿が疑わしそうに目を細める。

「あ、15歳です。」
メルは言った。

「学業の程は?」

「中の上、くらいでしょうか……?」

学校に行かないメルに聞かれても困ることだ。一番無難であろう返事をしておく。

「俺様は、貴様をあの家に戻すつもりはない。単刀直入に言うが、貴様には人質となってもらう。ただ、役立たない人間を置いておくだけの余裕はないのでな。勉強はしてもらう。明日にでも教育係を付けよう。幸い、夏休みシーズンだから学生の死喰い人もここに来ることができる。役に立たなければ……、殺しはしないが罰はある。」

(ここまで清々しく人質宣言されるとは……。それにしても、学生の死喰い人もいるなんて。この屋敷に来る、と言うことは別の場所に住んでいる。ここは後の拠点かしら?)
メルはやや驚きつつも、得られた情報の量を嬉しく思った。

「……わかりました。」
少し間を持たせた後、メルは頷いた。

「人質様は多少は『大切に』扱ってやろう。貴様の部屋は廊下の突き当たりの右側だ。もう寝ろ。」
ヴォルデモート卿は言った。

「わかりました。……おやすみなさい。」
メルは素直に従った。

眠る必要はないが、従わないと面倒なことになる。

(とりあえず表面上はイエスマンを貫いて、裏で工作しよう。)

まずはどうやってこの屋敷の外界と連絡を取るか。フクロウは使えないと考えられるから、残るのは自らが直接出向くか、使者を遣わすか、だ。

使える人質である限り、ヴォルデモート卿がメルに手を加えてくることはないし、手を加えられたところで大して困りはしない。

1人の作戦会議は布団の中で続けられるのだった。
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