ショートショート

□オムライス
1ページ/1ページ

SS

《オムライス》

「ご注文は何にする?」
「オムライス」
僕がよく来るお店はオムライスが美味い。そして店長の娘さんがーー。
「いつもオムライスだね」
「ここのオムライス好きなんで」
と笑いながら言う。《貴女》も好きとか言いたいが勇気はない。
「ここのそんなに美味しい?」
「本当に美味しいですよ。小さい頃はオムライスは苦手だったのにここのだけは食べれましたから」
「本当? よかった。お父さんのオムライス食べすぎて慣れたのかな?」
「そうですよ」
笑顔が素敵。

食べ終わる。席を立ち会計へ。五百円を取り、渡す。
「ちょっとですね。ありがとうございました。また来てね」
ここに来ると気持ちが落ち着く。そして何より楽しい。
気分が上がり、バイトでも笑顔が増える。お客さんにも言われた。今もバイトへと向かってる。店長へ挨拶し制服に着替えために更衣室へ。
「おっ、いつものオムライス食べたな。」
「そうだよ。あの店のオムライスは格別だから」
同僚と少し談笑し。仕事する。今日も早くバイト時間が終わった気がした。
「やっと終わったな」
「疲れたよ。明日もいつも行ってる店に行くのか?」
「予定ではね」
「美味しいオムライス出す店見つけたから行かない?」
少し迷うも「行こう」
「よし、決まり!」
《オムライス好き》といってもあの店しか行かないな……と思った。

明日がきた。バイトも終わり。
「行こうぜ」という友達に連れていってもらう。ハンバーグの店のようだが僕の好物を頼む。出てきたのはデミグラスソースがかかったオムライス。スプーンで一口サイズに口へと入れる。

違和感がある。もう一口。違和感がある。
「どうした? 好みじゃない?」
昔は食べられなかったのはデミグラスソースだったから。デミグラスソースは美味しく感じる。でも、何かが違う。少し水を飲む。
「今はケチャップ派なんだな。昔はデミグラスだったなよな」
「えっ」
驚く僕に、驚く友達。
「覚えないか。昔、ワインの入ったデミグラスがかかったものを食べて倒れた……。」
「自分で自然と避けてたのか」
「うん」

「倒れるの嫌だし、俺はケチャップ派だな。」
「全部のデミグラスにワインが入ってるわけじゃないよ」
と笑いながら言う。
「えっ」
もっといろんな所へ食べに行こう。でも、あの店はずっと好きだろうな。だってオムライス好きになった原点だから。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ