ショートショート

□メモリズム 記憶主義
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「いらっしゃいませ」
綺麗でほっそりとした女性が出迎える。
「記憶力が優れる薬があるとかないとか……聞いたんですが、あり……ます?」
「メモリズムですね。ありますよ。担当の方を呼びますね」
近くの席に呼ばれ担当者が来るのを待つ。

「メモリズムですね。」
「はい。体に害は……」
「体にはございましたよ」
「なら、購入します! 」
「まぁまぁ、慌てずに。値段が少しお高くなりますが」
ちょっとの間が空き。
「一年分 何円ですか? 」
3本の指を出す。
「三十万円ですか?」
「三百万です。 ちょっとお高いですよね」
ちょっと笑いながら言う。
「でも買います!」
「お買い上げありがとうございましす」
「ではこの薬を《毎日》お飲みください」
「お金の方はどうすれば?」
「お試し期間が1ヶ月ほどあるので……」
「ありがとございます。助かります!」

この社会で僕も賢くなれる!
今は「記憶主義」と呼ばれるものが流行している。知識は必要なくなり記憶だけが大事となっていた。
翌日、会社へ行く。
「〇〇君! 前の仕事は終わったか」「もちろん。全部覚えてます。」
「それはいい。何か変わったな」
「昨日少し羽を伸ばしたらからですかね」
飲んだ日から効き目は出てくる。1ヶ月が経ちまたあの場所へ行く。
「お願いします! 効き目が切れて仕事に影響が。」

脳にはメモリズムのおかげで仕事は捗るが薬には中毒性が……。この社会はこの会社にむしばまれる。気づく者は出てくるのか。

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