夢小説

□第2章
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「ナルサス様は何故、町へ行こうとお考えに?」


自分達の家から町まではかなりの距離がある。
馬を走らせても良いが、買い物をする間、馬を置いておく場所もなく、適当な場所に置いて盗まれても困るため、2人は地道に歩いて行くことにした。
せめて、退屈にならないように、とアッシリアは積極的にナルサスに話し掛ける。

「大した理由は無いが…此度の戦について少し問おうと思ってな」
「戦?」
「ああ。今はそうでもないが、先程、一部空が赤く染まっていた。方角からして、アトロパテネ平野で戦でも起こっていたのだろう」
「アトロパテネでしたら、パルス軍が戦っていらっしゃるのでしょうね。パルス軍にナルサス様のご友人、ダリューン様が属しているとお聞きしました。もしかして心配してらっしゃるのですか?」
アッシリアの口から"ダリューン"という単語が出てくるとは思っていなかったナルサスは、一瞬我が耳を疑った。

確かにダリューンは、ナルサスの数少ない友人の一人だが、もうかれこれ会ってはおらず、生死すらも分かってはいない。とはいえダリューンは強い男だ、戦で死ぬことはまず無いと思うが。
それに、奴の強さはパルスに住む者ならほとんどが理解している。
ダリューンが戦で命を落とせば、嫌でも訃報が耳に入ってくるだろう。

「いいや、私が知りたいのはダリューンなぞの事ではない。戦の状況、それのみだ」
「それでしたら此度もパルス軍の勝利ではないのですか?何しろ不敗の王、アンドラゴラス陛下自ら戦に出ていらしているのですもの」
「…そうだと良いのだがな」
その意味深な発言を理解出来ないアッシリアは、ただただ不思議そうに首を傾げるばかり。

「それよりも何故、ダリューンの事を知っている?話を聞かせた覚えはないのだが」
「兄様に1度だけ聞かせてもらったことがあるのです。ナルサス様には、とてもお強い御友人がいらっしゃると」
「…そうか」


ナルサスは、何故戦場がアトロパテネ平野なのかをずっと疑問に思い、答えの出ないもどかしさに無意識に眉間に皺を寄せていた。

パルス軍の騎兵が強いことは他国にも知れ渡っているのにも関わらず、戦の舞台は、その騎兵が最も活躍出来る平野。
最も可能性が高いのは、パルス軍が敵軍をアトロパテネ平野へとおびき寄せる策であるが、敵軍はそんな簡単な策に引っかかるほど考え足らずなのだろうか?
しかし、逆に敵軍がパルス軍をアトロパテネ平野におびき寄せたとは考えにくい。
ならば何故?

そんな考えが、先程からずっとナルサスの頭の中をぐるぐると巡っては解決出来ずにいた。
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