夢小説

□第4章
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ありのままの想いをぶつけた2人は、縋るような眼差しで主を見つめて次の言葉を待った。そんな兄妹の姿に情が移ったのだろうか、ダリューンが2人を後押しするような言葉を紡ぐ。
「よいではないか、ナルサス。エラムもアッシリアも気配りができる」
それどころか、弓や短剣の腕もなかなかのもの。連れて行っても差し支えないどころか、おおいに役立ってくれるだろう。

ダリューンの頼もしい後押しに、エラムもアッシリアも先程までの縋るような弱々しい表情とは一変、パッと明るくなった顔をダリューンへ向けるともっと言って下さい、とお願いする。しかし未だにナルサスは連れて行くことに抵抗があるようで難色を示したまま。
このままでは埒が明かないと感じたのだろうか、今まで黙って話を聞いていたアルスラーンがスっと手を挙げて意見を述べた。
「私からも頼む、ナルサス。エラムとアッシリアを置いていったとして、我らの中でこんなに美味な食事を作れる者が他にいるか?」

アルスラーンの言葉に、ピタリ、と皆の動きが止まる。まるで、時間そのものが止まったかのように。だが、静止の時間は長く続くことはなく、アルスラーンの言葉にダリューンは決まりだな、と頷き、あれだけ否定的であったナルサスでさえも2人の肩に手を置いてこれからもよろしく頼む、と告げた。
「ありがとうございます!」
「此方こそ、今後ともよろしくお願いします!」
鶴の一声、とはこのような事を言うのだろうか、とアッシリアは密かに思いながらも、後押ししてくれたダリューンとアルスラーンに感謝の言葉を述べた。


「さっそく荷物作りをいたします!」
自分達も付いていけることになったエラムとアッシリアは満悦の様子で自室へ向かおうとしていた。そんな彼らに、自分も身の周りの物を整えねば、とアルスラーンもその場を立ち上がりエラムに何か手伝えることはないかと提案してみせるも、やはりと言うべきかバッサリと断られてしまう。そんな兄に、アッシリアは恩人にそんな態度はないでしょう、とムッとした表情を浮かべて諌め、そんなご立腹な彼女をアルスラーンがまあまあと宥める。

ワイワイとした、賑やかな3人の姿を大人ふたりは穏やかな表情で見つめて不意にダリューンがナルサスに聞こえるぐらいの声で言葉を紡いだ。
「宮廷では同年代の友が得られなかったからな。2人には殿下の良い友になってもらいたいものだ」
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