Fate/Void 第二次リアルワールド聖杯戦争

□プロローグ
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「う"…………あ…………」


指一本すら動かない、とはこのような感覚だったのか ──。
身体中から痛みを越えた熱を感じる。折れた骨の量は一桁ではすまないだろう。霞む視界の中、途切れかける意識をかろうじて繋ぎながら考える。

真っ赤な鮮血にまみれ、粉砕されたコンクリートの上に横たわる少女。指一本すら動かないと比喩したが、指先は微かに動いていた。そしてその指を、手を…血まみれの少女を抱きしめている青年がいた。


「──────!!」


青年の赤が目に入る、とてもきれいで美しい、そんな赤色。
彼が何か叫んでいるが聞こえない、機能を失ったわけではなさそうだが、ノイズが入っているかのようにはっきりと聞こえることがない。ただ、青年の表情からして怒ってるか泣いているかのどちらかだろう。
少女の手を自身の頬に押しあて、その整った顔を歪めて泣き叫ぶ。その雫がポタポタと顔にあたる。熱をもった身体には冷たく感じた。
彼は泣くような人ではない、泣くところをイメージできない。少女はそれに驚いたが、目を見開くことすらままならなかった。


「──!─────!!!」


なおも耳に届かない叫びが響く。霞む視界がクリアになる少しの時間、視界に映る真っ暗な空に爛々と輝く月と、真っ赤に照らす炎。少女は場違いながらも笑みを浮かべた。あぁ、彼とこの景色はきっと絵になるだろうにな。

目の前が霞んでいく、先ほどまでの美しい景色が色褪せる。少女の側に転がる金色の杯に青年は焦ったように手を伸ばす。
ズルリと青年の手から滑り落ちた腕は反動で少女の体の向きを変えた。
奇しくもそれは金色の杯の方向で、少女の手はそちらに倒れていって──────。










金色の杯に触れたものは願った。

『────────。』


そして、光が。
 

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