はたけ家族の物語

□誕生
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「ナルト!陣痛はどうだ?」
「ばぁちゃん、今は平気だけど、病院来るまでに何回か、かなり痛くなったってば…」
「そうか…思ったより早く産まれるかもしれないな、至急分娩室の準備をする!」

なんだろう。
ここに来て不安になってきた。
大丈夫かな。
俺、男だし、ちゃんと産めるかな。
赤ちゃんを危険な目に合わせたくはない。
でもどうすればいいのか分からない。

「ナルト!」
「そんな顔をするな!お前はもうすぐ母親になるんだ!それに私とサクラ、カカシもついている!不安がることなど何もない、胸を張れ!」
「ばぁちゃん…ありがとってば…。いてっ!うぐぅ…!」

今までで1番強く、長い痛み。
痛い
苦しい
辛い
身体がバラバラになりそうな重い痛み。
呼吸が上手くできない。

「うぐぅ、うっ、…はぁっ、いっ!!!」
「ナルト!ゆっくり、ゆっくり息をするんだ、ゆっくり吸って、はいて」
「せん、せ、」

カカシ先生まで辛そうな顔をしている。
そんな顔するなってば。
大丈夫
大丈夫

「大丈夫だってば、せんせ、俺、先生がいてくれれば、がんばれる、から」
「ナルト…ずっといる、だからがんばれ!」
「へへっ、おうっ!」

俺の手を力強く握る先生の手は、微かに震えていて、きっと先生も不安なんだ。

「ナルト、カカシ!準備が出来た!」

綱手のばぁちゃんとカカシ先生に支えられながら分娩室へ向かい、ベッドに横たわる。

「うん、もう産まれるな、ナルト!頑張るんだよ!」
「そうよナルト!私と綱手様、カカシ先生もついてるんだから怖いものなしよ!」
「ナルトっ、がんばれ…がんばれ!!!」

綱手のばぁちゃん
サクラちゃん
カカシ先生

痛みの中でも、力強いエールが聞こえる。


「んんんんんーっ!!!…はぁ!はぁ!」

痛い
苦しい
辛い

会いたい!!!

「うぐぅ、……!…っんんんんああ!!!」


ふあぁぁあ ふぎゃ、ふぎゃあ

ふえぁあ ふにゃあ、ふにゃあ


「はっ、はっ、う、うまれた、ってば…?」

2つの元気な赤ちゃんの声。
愛しい愛しい
俺とカカシ先生の
赤ちゃんの声。

「おめでとうナルト、元気な男の子と女の子
だ!よく頑張ったな!!」
「やったわね!ナルト!!!」

綱手のばぁちゃんとサクラちゃんに抱かれている小さな小さな赤ちゃん達。
そっと俺の胸の上に乗せられる。

「赤ちゃん、俺の、俺たちの赤ちゃんだってば、せんせ……!!!」

先生のほうを見ると。

はらはらと涙を流していた。

「な、ると…よく、がんばった、ありがとう…ありがとうっ!!!」

こんなふうに泣く先生は初めて見た。
ボロボロと涙を流す先生は微笑んでいて、それはとても、幸せそうで
なんだろう、つられちまったのかな?
俺も涙が
止まらねえや。

「せんせぇ…!」
「なると、ありがとう、本当に、ありがとう」

赤ちゃんごと俺を優しく抱きしめる先生は、また震えていた。
でもさっきみたいな不安の震えじゃなくて、喜びに溢れていた。

「ほらカカシ!びしっとしな!お前は父親になったんだよ!」
「そーよ先生!赤ちゃん、抱っこしてあげたら?」
「先生、赤ちゃんだってば!抱っこ、してあげて?」

恐る恐る、先生は双子を抱く。
その表情は、それは幸せそうで、俺はまた涙が出そうになった。

「小さいね」
「うん」
「壊れちゃいそうだ」
「大丈夫だってば」
「守らなきゃね」
「当たり前だってば」

赤ちゃん
俺もカカシ先生も、がんばるからな。
絶対、守るからな。
この命にかえても、守るからな。
家族4人で、幸せになろうな。

赤ちゃん
生まれてきてくれて
ありがとう。
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