風と氷と

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ある晴れた日の、とある屋敷の庭園で、水色のローブを纏った老人と、ラベンダー色の髪を揺らした少女の2人が、ガーデニングテーブルに置かれた水晶を見つめていた。



「サアラ、サアラッ」

「はいはい、ミナ様」

サアラと呼ばれた老人は、少女、ミナの脇に手を入れて抱き上げ、自分の膝に乗せ、水晶に右手を翳す。

ミナはオレンジの瞳を爛々と輝かせながら水晶を見つめている

この老人サアラは、ミナの親に仕える専属の敏腕占い師である。
まぁこの魔法界で占いなど日常茶飯事なのだが。


「今日はミナ様の未来の好きな人を占いますね?」

「うんっ」

ミナは好きな人、と言う言葉にほんのり頬をピンクに染め、照れくさそうに笑う。
可愛い。…ゴホン

フォォ一……

2人を中心に草木がざわめき始めた。
サアラの魔力が水晶に集中していく

鳥が鳴き、木の葉が舞う。

サアラは翳した手を右、左、右、左と動かし、最後に水晶に手を置いた。

キィイイイィィン…

少し耳に響く鋭い音と共に、水晶に光が集まりやがて…

パンッッッ

光が弾け飛んだ。

そこに見えたのは、紺色の髪で…

「裸ん坊!」

裸の少年だった。

「私裸の男の子を好きになるの!?
ないない!ぜっっったいない!!!

まさかの全否定……………

「あらあら、………ん…?…これは…」

サアラは何かに気付き、ミナを見つめ、嬉しそうに笑った。


「どうしたの?サアラ」

「何でもございませんよ」

ミナは、ん?と小首を傾げ、サアラに釣られて笑う。

そして………

「ミナー!」

名前を呼ばれた方に顔を向け、またまたニッコリ、笑った。

「ルイッ!」

ミナの6つ上の姉、ルイ。
腰まである茶髪の髪を揺らしながら駆け寄ってくる。

後ろには馬車がある。
どうやら歌のレッスンから帰ってきたようだ。
ミナもサアラの膝から降りてルイに駆け寄った。

「おかえりなさいっ」

「ただいま!」

2人は顔を見合わせて満面の笑みを浮かべ、手を繋いでサアラの方を見た。

「サアラただいま!お家に入りましょっ」

「ルイ様、おかえりなさい、ミナ様とおやつになさいますか?」

「そうね、ミナ今日のおやつなぁに?」

「今日はパウンドケーキって言ってたよ!私も手伝ったの!」

「何手伝ったの?」

「型に流し込んだ!

「そっか!」

ルイは、それは手伝ったのか?と、頭の端に浮かんだ言葉を押し殺し、ふふっと笑ってミナの手を握り直し、玄関へと向かった。







それから数日後、…フィオーレ一帯に号外が流れた。



『リノ夫妻自宅寝室にて死体で発見される。
ご令嬢のお2人は運良く、当主の弟であるリアン・リノ様のご自宅に宿泊されており、殺害は免れた。
発見は朝起きてこない夫妻を心配に思った使用人だった模様、殺害されたのが夫妻のみであった為、暗殺の可能性が濃厚である。
これにより、全てのご遺産は長女である
ルイ・リノ様に相続されるそうだが、本人はこれを拒否、当主の弟であるリアン・リノ様に全てを相続されるとされた』

殺害されたミナとルイの両親、ダイア・リノとルイナ・リノ。
フィオーレ王国の数ある事業を手がけ、国王と共にフィオーレを支えてきたとまで言われていたリノ財閥の当主暗殺により、世界中の人々がそのニュースに食いついた。






時は代わり、ミナが産まれる前のこと、リノの財閥はある財閥とトップを争っていた。

その財閥が、…トエル財閥
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