緋色の翼
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Sognarsi X:寄生型
「入城を許可します、クロス元帥のお弟子さんたち」
軽快なアナウンスに三者は横目を向けるが、状況は変化しなかった
シャナは羽を盾に変えたまま、青年は刀を突き付けたまま、アレンは脂汗を流したまま膠着の一途を辿っている
現状を打破したいのは山々だが、緩むことのない殺意に警戒心を解くわけにはいかない
こんなところで死ぬのは真っ平ごめんだ
…正直、助けがほしい
踏みしめる足に力がこもる
一つ息をついて、気合を入れて、仕方ないとあきらめて
シャナが武器の形状を変化させようとした瞬間
拍子抜けするほどかわいらしい音が彼の頭を叩いた
「もー、いい加減にしないと門閉めちゃうわよ」
眉間にしわを寄せた可憐な少女がクリップボードを手にそこに立っていた
開いた門から堂々と出てきたらしい彼女だが、視界に入るまで、いや彼の頭が叩かれるまで意識の中に入ってこなかった
警戒心を抱く以前に驚きで盾は完全に形を失ってしまった
「入んなさい」
有無を言わさぬ彼女の姿勢に、三人は従わざるを得なかった
「おい、コムイどういうことだ」
不本意に戦闘を中断させられた腹いせか、青年は低い声でゴーレムに声をかけた
「いやーちょっとした早とちりでね、彼らはクロス元帥の弟子だったんだ
ティムキャンピーがついてるのが何よりの証拠だよ。彼らはボクらの仲間だ」
「…仲間…ね」
青年は冷笑を浮かべつぶやくだけでそのまま会話を続けることはなかった
教団内は外観をそのまま内装にしたような、ひび割れた古城のような場所だった
ぽつぽつと人はいるものの、生をかけた職に就いているだけに雰囲気は陰湿を極めていた
まるで品定めをされているように絡みつく視線、かすかに聞こえる話し声、やつれた表情
なんだか、シャナは兵器にでもなった気分だった
そこにあの少女の明るい声が響く
「私は室長助手のリナリー。室長のところまで案内するわね、よろしく」
少女、リナリーの自己紹介に我関せずと青年はスタスタその場から離れていった
その後ろ姿を無遠慮に軽い口調でアレンは「カンダ」と呼び止めた
青年はぴたりと足を止める、そしてギラついた視線をアレンへと返した
「…って名前でしたよね…?よろしく」
そういって右手を差し出す
それを一瞥だけして
「呪われてる奴と握手なんかするかよ」
そのまま、背を向けカンダは廊下の向こうへと消えていった
「ごめんね、任務から戻ったばかりで気が立ってるの」
「まあまあ、アレンもいじけないで。室長さんのところに行こう」
「いや、僕が悪いことになるの?」
「…さあ、リナリーさん行きましょう!」
「スルー!?」
猫のように首根っこをつかみ、有無を言わさずシャナはアレンを引きずり奥へとずいずい進んでいった