雪兎の足跡
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Bersaglio T:護衛
やけに歩を進める足が重く感じる
はぁ、と重厚感のあるため息を吐き見上げた先にあるのは住宅街に浮足立つことなく溶け込んだ、沢田家だ
大きめのキャリーケースを片手に、一歩、また一歩と歩を進めるが一向にインターホンまでの距離は縮まらない
別に足踏みしているわけじゃない、単純に緊張で歩幅が極端に小さくなっている、だけだ
うぅ…唸り声をあげても誰かが助けてくれるわけではない
時間だけが過ぎるばかりで現状は何も変わってはいない
わかってる、わかってるけどやっぱり緊張するじゃん!
「がはは!このケーキはランボさんのだもんね!」
「こらランボ!」
すると、沢田家の庭あたりから聞き知ったランボの声が聞こえてきた
なぜだろう、頼りなくてあまりにも頼りないやつだがこの際だとむしろうれしく感じるのはなんでだろうか
知っている声に妙な安心感を得るが、普段の癖なのかつい気配を殺して庭を覗く
ものがやっと干せる程度の狭い庭でランボがケーキの入っているらしい箱を掲げて嬉々としている
私の知っているいつものランボだ
そして、うっすらと空いた窓から癖っ毛の少年が怒りを隠さず現れた
彼が沢田綱吉だろうか
「それは母さんが買ってきたやつなんだから勝手に食ーなよ!」
彼はぐるぐると庭を数周してランボに翻弄され、やっとこさ捕まえたところで盛大に空中に身を預けて顔面から地面にぬめりこんだ
少年はずいぶんと運動神経が悪いらしい
あげた顔に泥をまぶしている姿が、どうにも間の抜けている
それに私は身を潜めているのも忘れてくすくすと笑いをこぼしてしまった
「だれだ」
その声に驚いてびくっと体を震わせた
この圧倒される赤ん坊の声、これもまた聞き覚えのあるものだ
「は、ハーイ…リボーン」
「なんだ六花か、隠れてねーで普通に訪ねてきやがれ」
「ごめん、なんだか緊張しちゃって…」
いったいどこから現れたんだろう…
ついさっきまで庭にいたのはランボと沢田綱吉(仮)だけだったはずなのに、リボーンはまるで当然のように縁側で銃を構えていた
やっぱりリボーンは恐ろしい
改めてリボーンの凄さを認識するとともに内心見つかってよかったとホッとする
きっとあのままだったら誰にも見つかることなく、インターホンも押せずじまいだったことだと思う(チキン)
「え、だ、誰なの!?」
顔の泥を落とすことも忘れて少年は尻を引きずりながら後ずさった
とりあえず隠れるのもなんだし、と思い塀を両手でつかんで思いっきりジャンプする
そのまま鉄棒の要領で体を制止させ、100点満点完璧なアクロバットを決め込んだ
よし、うまくいって気持ちがいい
ガッツポーズをぎゅっと握って喜びをかみしめると
「キャリーケース忘れてるぞ」
「あわああああ」
せっかくうまくいったのに…
私はとぼとぼと戻り、キャリーケースをとって中に上がらせてもらった