緋色の翼

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Sognarsi V:クロス・マリアン


 ずいぶんと日が高くなった頃
 インドのどことも知れぬ地でシャナは弟弟子とともに仲良く正座をさせられている
 髪もまともに結う時間もなく、ぐしゃっと撫でまわしたような髪型に煤にまみれた格好で窓ガラスもはまっていない宿屋に訳も分からず正座をさせられるが、クロス元帥の突発的な招集は今に始まったことではなかった
 優雅にワインを回し、気候を無視した厚手のコートをきっちりと羽織る彼はだれがどういおうと怪しい男に間違いない
 その怪しい男ことクロス元帥はワイングラスを回す手を軽く前に出し、見下すように二人に言葉を渡す

「シャナ、アレンよ」
「はい、師匠」
「なんですか?」
「お前が俺の助手になってもう3年、シャナは4年になる。そろそろお前らも一人前になってきた頃だ…今日から正式にエクソシストと名乗ることを許す」
「!!ホントですか!?」

 低く重厚感のある声で紡がれた言葉にシャナはただ意外という言葉しか浮かばなかった
 今まで金という金を湯水に流し、豪遊三昧してはシャナ達につけとして働かせていた彼が4年という歳月を経てあっさりと手放すという
 いい道具としてしか使われていないのかと思っていたが、まさか本当にエクソシストとしての修行だったとは…

「だが」
 喜びを噛みしめるシャナ達に水を差すようにクロス元帥は言葉を割った
「そのためには俺と共に本部へ挨拶に行かねばならん。お前達…本部の場所は知ってるよな?」
 言いながらクロス元帥はスムーズな所作で懐から金槌を取り出す
「…はい?」
 やっぱりこんなことか…。とシャナは冷や汗を流し、アレンはじんわりと引き下がる
「俺のゴーレムを代わりに置いて行ってやる。コムイという幹部にも紹介状を送っといてやるから…」
 そう言いながらじりじりと距離を詰めるクロス元帥
「目が覚めたら出発しろ」
「まさか、バックレる気ですか師匠!?」
「うまい話はないと思いました!」
「俺、本部キライなんだよ」
 そんな子供のような言い訳と共に二人の頭部には遠慮のかけらもない一撃が入り、すんなりと意識を沈められた
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