雪兎の足跡

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「えっと、初めまして雪菜六花です」
「あ、沢田綱吉です…って、リボーンこの子だれなんだよ!またお前の仕業か!?」

 小声で聞こえないようにリボーンに話しかけているらしい沢田君だが、あいにく耳がいい私にはすべて筒抜けだった
 そうか、沢田君は私が来ることを聞かされていないのか
 鬼畜家庭教師のリボーンらしいといえばらしいが、沢田家の一人息子に知らされていないのはまずいんじゃないだろうかと思う
 …家光さんは、奥さんに伝えてくれているんだろうか
 一抹の不安を抱えるもリボーンが家庭教師をやっている家なんだ
 たぶん大丈夫だろうと無理やり自分を納得させておくことにする

「ちげーぞ、九代目からの勅命でツナの護衛のためにやってきたんだぞ。ちなみにここに一緒に住むからな」
「…え?…なぁぁーーーーーー!?そんなのオレ聞いてないんだけど」
「うるせーぞダメツナ」

 手際よく後ろに回り、後頭部を蹴り上げる
 綺麗に決まったそれにより、沢田君の顔面は見事に机を強打
 大変痛そうな鈍い音が聞こえますが耳をふさいでいるので私には聞こえません

「いってぇぇぇーーーー!!」

 聞こえません
 しかし、この調子だと部屋を用意してもらえているかも怪しいな
 このキャリーケースのほかにも荷物を宅急便で送ってもらっているんだけれど…置く場所はあるんだろうか
 こんなにも不安なホームステイはなかなか味わえないのかもしれないと不安を通り越して面白くなってきたころ、ただいまーと柔らかな女性の声が聞こえた

「だれか帰ってきたの?」
「ママンだぞ」
「ってか、女の子がうちに住むってどういうことなんだよ!」
「えっと…護衛の任だからできる限り離れないようにって命令なの…ごめん、沢田君」
「こいつのことはツナでいいぞ」
 まるで家主のようだ
「わかった、ツナ」
「オレを置いて話を進めるなよ!」
「あら、ツッ君にぎやかね?どーしのたの?」
「あ、母さん!」

 キッチンの入り口で顔を出しているのは声の通り柔らかくて優し気な印象の女性だった
 買い物かごをさげて、優しい笑みを蓄えて楽しそうにキッチンの状況を確かめている

「あー!あなたが六花ちゃんね!今日からよろしくね」

 よ、よかったぁぁぁぁぁ
 お母さんには事情が伝わっていたらしくて足から崩れ落ちそうなほど安心した
 ほっとしすぎてもう泣きそうだ

「母さん、この子のことしってんの!?」
「ツッ君にはいってなかったかしら?今日からホームステイする六花ちゃんよ」
「聞いてないよ!」

 そういえばランボどこ行ったんだなんてもう気にも止まらないほど安心しきった私は遠慮もなくずずいっとお茶をすする
 あー、お茶ってこんなにも芳醇な香りでおいしかったんだなぁぁぁぁ

「いいじゃない!お友達も増えるし、お母さん賑やかなほうがすきだし」
「そういう問題じゃないだろ!」
「だが、もう決まっちまってるんだ。がたがた言わずに空き部屋に案内しやがれ!」

 今度は左頬にがっつりと食い込む蹴りをくらい、ずいぶんとヒットポイントの減ったツナはふらふらとした足取りでキッチンを出てこっちと言ってきた
 「お茶ありがとう」と湯呑を置いて私はそれについていった
 そしてなぜか当然のように私の方にリボーンも乗ってくる
 慣れているからいいんだけれども
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