雪兎の足跡

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Bersaglio V:レオンの尻尾


「お兄さん!大丈夫ですか?」

 走る勢いそのままに、ツナは病室のドアをこじ開ける
 その先には左腕にギブスをはめられ、酸素マスクをつけた青年がベッドで横たわっていた
 しかし、青年はにこやかにツナを歓迎する

「おー沢田、早いな。情けないがこのザマだ」
「ひいいい!!どーしてこんな目に〜!!?」

 素人目にも怪我の具合は悪いということはわかる
 ボクシング部主将で人一倍トレーニング好きとの彼だ
 その彼があっさり負けて病院送り
 相手の実力は相当なものかもしれない

「怪我の具合はどーだ?」
「骨を6本折られて7か所にヒビ…そして…」
 つけていた酸素マスクをはずし、にっと笑って見せる
「見ろ、歯を5本持っていかれた…」
「ああ!」
「といってもボクシングで折っていてもともとさし歯なのだか」
「(笑っていいのやら!)」
 …なぜだろう、ツナの心は読心術の使えない私にも手に取るように分かる気がする

「そういえば、そこの女子は誰なのだ?」
 ふと話が変わり、あっと気づいて会釈する
「初めまして、沢田綱吉の護衛でイタリアからやってきた雪菜六花です」
「おお!では強いのだな!一度手合わせしてみたいものだ」
 できたら勘弁願いたい
 ボクシングは専門外だからルール全然知らないし、無益な戦いをしたがるほどの戦闘狂でもない
 丁重にお断りすると了平はそうか、残念だとあっさりその話を見送ってくれた
 意外と聞き分けがよくて安心した…

「しかし、襲ってきた男…油断していたとはいえ恐ろしく強い男だった…」
「え?犯人見たんですか!?」
「ああ、奴はオレの名を知っていた。あの制服は隣町の黒曜中のものだ…」
「ええ!?中学生ですか?」
「うむ…」
「でも、そうなると厄介だね。あっちしか情報を持っていないってことだし、何の情報を元に襲撃されているのかもわかんないもん」
 こっちにある情報は相手が黒曜中の生徒ってことだけ
 しかも、これだけ被害にあっているってことは殺し屋である可能性も考えられる
 戦況は完全にこちらの不利となっているわけだ
「沢田も気をつけろよ」
「お兄さんまで!オレは関係ありませんって!」
「…しかし、くそっ」
 悔し気に言葉を漏らす了平
 まさか、ツナが狙われるかもしれない理由でもあるんだろうか
 ごくりと唾を飲む
「あのパンチはわが部に欲しかったー!!」
「(こんな時でもボクシングー!!?)」
 確か今、メリケンサックがポケットの中にあった気がする
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