日向の5人姉妹

□第1話
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彩花side
ピピッピピッピピッ
機械的なアラーム音に目を覚ます。
私は加藤家の四女、加藤彩花だ。そして隣に寝ているこの可愛い女の子は私たち5人姉妹の末っ子の菜緒。私たち2人の高校生組は同じ部屋になっている。まあそれも菜緒が話せなくなってから、のことだけど。


「菜緒、おはようトントン(肩を叩く)」
そうやって起こしてあげるともぞもぞと動いて私に寝起きの可愛い笑顔で声こそ出ないが、おはようと笑いかけてくれる。それだけで私はこんな可愛い妹がいて幸せだなと思う。


菜緒は両親を失ってから声が出なくなってしまった。初めは私たちもびっくりしてすごく焦ったし、菜緒が1番びっくりして毎晩のように1人で泣いていた。私が同じ部屋になってからは私に夜泣きつくようになった。今まで菜緒は末っ子なのに私たちに泣きついたりするような子ではなかったから、すごく菜緒にとって辛くて抱え込めなくなっちゃったんだなと、お姉ちゃん達が言っていた。


自分が出来ていたことが突然出来なくなった菜緒の気持ちを全てわかってあげたいけど私は、声も出るし心にぽっかり穴が空いてしまっただけで菜緒の苦しみを全てはわかってあげられない。それが1番悔しいことだ。今日だって学校に一緒に行って帰ってくることしかできない。


菜緒は学校で上手くいかないことがあっても理解してくれる友達がいてくれるから、話せなくても美玖ちゃんという私たちの幼なじみみたいな4姉妹の末っ子の子がいるから、大丈夫だと思うけど、菜緒は辛いことを辛いって私たちに言えないし、表すことができない。


両親が亡くなる前も菜緒は辛いことを辛いって言えない末っ子だったから、いつもこっそり1人で泣いていたと久美姉が言っていた。久美姉は菜緒と部屋が隣で、受験勉強のために遅くまで起きてて、突然隣の部屋から泣き声が聞こえてきた時、菜緒の部屋に行っても菜緒は大丈夫だからと一点張りで、何も教えてくれなかったと言う。


ただ話せなくなってから菜緒には2つの変化があった。1つは私と同じ部屋になったこと。これは史帆姉が提案してきたことだ。史帆姉は仕事が忙しくて、菜緒に構ってあげたいし夜泣いてたら駆けつけたいって言ってたけど、残業とかもあって菜緒と同じ部屋にはなれない。

久美姉は、今年卒論で菜緒のことももちろん心配だけど、大学の課題やら何やらがすごい忙しくて、菜緒の変化に気づくのは難しい。

みーぱんは、私たちの家計を支えるためにアルバイトを頑張ってくれているから、疲れているのに菜緒のことを任せるのは酷だろうということで、私が菜緒の同室を引き受けることになった。


同室になってから、久美姉が言ってた菜緒が夜中突然泣き出すというのが本当だって分かった。初めは隠すように泣いていたけど、毎回大丈夫、大丈夫とあやしながらおいでと手を広げると、私の腕の中で泣いてくれるようになった。


前に史帆姉が、夜帰って来た時水を飲みながら菜緒が泣いてたから、ゆっくりでいいから理由教えてくれない?って聞いたら、ボードに夜になると突然不安になって、感情を抑えられなくなると。


2つ目の変化は、私が同じ部屋になってしばらくたったこともあるのか、最近は夜不安で目が覚めると私に抱きついて泣き始めて、泣き疲れて眠りにつくような日が増えた。


ねえなおちゃん、お姉ちゃんはさ、菜緒が泣きながら起きて、私を起こすのが申し訳ないって史帆姉にボードで伝えたみたいだけど、全然迷惑じゃないし、私じゃ頼りないかもしれないけど、辛い時はいつでも泣きついて来て欲しいなあなんて思ってるんだよ。


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