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□チョコレートとホットミルク
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「ハイ、どーぞ」
「ありがと」
コトン、と音を立て、二人分のマグカップがテーブルに置かれた。注がれたミルクがカップの中でゆらゆら揺れている。熱いから気をつけて、と彼は僕の向かいに座り、緑色のカップからのぼる湯気を浴びながら、ゆっくり口を近づけた。
「ホットミルクなんて久しぶり。いただきます」
彼に言われた通り気をつけながら、淹れたての熱さを保ったままのミルクを味わう。それから、つまみのように準備しておいた板チョコレートを一口分に割って食べてみた。チョコレートが口の中でミルクによって溶かされていく。だんだんとその甘さと香りが広がって、思わず唸る。
「うん、合うね、これ」
「ほんと?俺もやってみよ」
彼も僕と同じように、ミルクとチョコレートが口の中でとろけ合うのを楽しんでいた。目を細めてぱくぱくと食べている。……チョコレートの割合が多い気がする。
「なんかチョコばっか食ってねぇ?」
「あ、松潤も食べたかった?」
「そういう意味じゃなくて……」
食べ過ぎはよくない。特にこのチョコレートのように甘くて美味しいものは。甘いもの好きの彼には酷かもしれないが、今日はこれでおしまい。
「じゃああと一口だけ!」
「銀紙に包んでしまっといてよ」
僕は二人の飲み干したカップを持って立ち上がり、彼はチョコレートをパキッと割って口へ放り込む。カップを洗おうとシンクに置いたら、ふいに僕の腰へ、細い腕がするりと割り込んできた。
「なに、どした!?」
「えへへ、あと一口あげるよ」
驚く僕にはお構いなしに、彼は僕の唇を塞いだ。それから口の中に何か温かいものが入ってきたことにまた驚いて、僕はサッと退いた。
「俺、背後ダメだってば!何…?」
なんだか濃厚な甘さが口いっぱいに広がってきた。そこでようやくそれがチョコレートだと気がつく。
「合うね、ミルクとチョコレート。俺たちみたい」
そう言って彼はいたずらっぽく笑っていた。